寿司職人に手袋はいらない! Sushiの文化を守る戦い

 新たな“寿司戦争”の勃発だ。江戸前でもなく、創作寿司同士の戦いでもない。日本食の新たなライバル、ラーメンとの戦いでもなく、寿司の文化を守り抜く戦いだ。
 マンハッタン区イーストビレッジで「Sushi Dojo」を経営するデビッド・ボウハダナさんは、つい最近、一時的に店を閉める事態に追い込まれた。ビレッジの人気店で何が起きたか。寿司職人らが生の魚を扱う、つまり寿司をつくる際に手袋を使用していないとして、ニューヨーク市保健局(DOH)が同店を罰することを決定したのだ。ボウハダナさんは戦うことにした。このばかげたルールを黙って、見過ごすことにはいかない、と。
 まず、ボウハダナさんが指摘するのは、手袋のほうが不衛生であるという点だ。違う魚や食材に触れても、手袋は工程ごとで変えるわけではないため、菌を繁殖させる可能性が高い点を専門家の視点も混ぜて、説明する。
 そして、ボウハダナさんが最も懸念するのが、寿司の将来である。寿司は人の手や指の細かな感触で作られる伝統的な料理だ。手袋で握った寿司は、そういった繊細な、そして絶妙なバランスで作られる寿司を壊す可能性がある。もちろん、質、つまり味は落ちる。ボウハダナさんは、これではニューヨークからよい寿司職人が消えるだけでなく、今後育つこともなくなるだろう。そうやって、本当の寿司はニューヨークから消えていくだろうと考えているのだ。
 このニュースが限りなく興味深いのは、このDOHに対して最初に反旗を翻したのが、外国人寿司職人だということだ。寿司でもなく、すしでもなく、Sushi。ニューヨークで確実にその市場を勝ち得ていった日本のお家芸は、このままニューヨークで本当の姿を維持していけるのだろうか。

doomoak