デザイン優先のNY建築事情 予算も納期も想定外

 アイコニックな公共建物が多々あるニューヨーク市では、市設計建設部(DDC)が行う「デザイン・エクセレンス」というプログラムのもと公共建築物の建設が計画されるが、いずれも予算を超過し、納期も遅れる傾向にあることが問題となっている。
 2004年以降、新進気鋭の建築家を選出し、コンペ方式で公共施設の新築、増改築を進める計画を遂行している同プログラム。13年に竣工したスタテン島にあるニューヨーク市警察(NYPD)新分署の建設は、当初の予算が300万ドル(約3億4000万円)だったにもかかわらず、最終的には約24倍の7300万ドル(約82億円)にまで膨れ上がった。また、クイーンズ区ハンターポイントに建設されているクイーンズ図書館分館は、当初2000万ドル(約23億円)だった予算が3000万ドル(約34億円)になると再計算されており、かつ工期も遅れている。
 DDCの関係者は「本来プログラムの目的は、スケジュールや予算と同様にデザインも大切にすることだったが、今ではデザイン重視が進み過ぎ、それ以外は二の次にされている」と取材で述べている。
 またDDCのデビッド・バーニー前局長は「建設費の高騰は業界自体にも問題があり、納期の遅れは市の判断が遅れることも一因だ」と、原因を指摘している。

クイーンズ図書館分館イメージ(スティーブン・ホール建築事務所ウェブサイトより)