第4回「風邪薬」後編 OTC101ファーマシー探訪 with ひぐち先生

higuchisensei日本の薬剤師・薬学博士で、現在コロンビア大学で博士研究員をする樋口聖先生による「米国市販薬(OTC)講座」。胃腸薬や鎮痛剤など、毎回テーマを絞り、OTCの種類や、安全な選び方を教わる。先生自身まだ在米2年。米国のOTCには驚かされることもしばしばだという。「一緒にファーマシーを紙面探訪して、賢い消費者になりましょう!」

第4回「風邪薬」後編:咳止めと去痰(咳と痰、症状に合わせ単剤と合剤を使い分け)
10月号の「風邪薬」前編では、総合感冒薬と鼻づまり緩和剤を取り上げました。今月は後編として、咳止めと去痰薬を見てみましょう。咳だけが出るときと、咳に痰が絡むとき、または咳は出ないけど痰が絡むなど、症状はさまざまでしょう。喉がイガイガするときの喉飴も含め、米国ではどんな薬があるのでしょうか。

 

①咳止め
OTC咳止め薬の有効成分は1種類。デキストロメトルファン(Dextromethorphan=DM)だけです。いろいろなブランド名の咳止めが市販されていますが、有効成分はみな同じ。「ロビタッシン DM」のように、箱に「DM」と表記されているのが咳止めです。「Cough Supplement」と表記されている場合もあります。DMは、脳に働きかけて咳を抑える薬です。日本で一般的な咳止め薬「コデイン」(米国では売られていません)よりも、DMの方が便秘などの副作用は少ないです。ただし容量には注意してください。総合感冒薬に含まれるDMは1回10mg と少なめですが、DM単剤だと30mgと少し多くなります。咳止めと去痰の混合剤「ミューシネックスDM」のように、60mgも含むものもあります。これは人によっては気分が悪くなる量です。総合感冒薬で咳が止まらず、追加でDM単剤を飲むときは容量を確認し、合計60mgを超えないようにしましょう。また、パーキンソン病や一部の精神疾患治療薬はDMとの飲み合わせが悪いとされていますので、必ず主治医に相談してください。

1

2

3

 

②去痰薬
OTC去痰薬の有効成分もただ1種類、グアイフェネシン(Guaifenesin)のみです。薬の箱に「Expectorant」と書かれていたら、それが去痰薬です。いろいろなブランドがあり、有効成分は全てグアイフェネシンですが、その容量は商品によって400から1200mgの開きがあります。咳止めとの合剤で売られることが多いですが、咳は出ないのに痰が絡むときは、必要のない咳止め成分を含まないグアイフェネシン単剤を探して飲むようにするといいでしょう。

5

 

③喉飴
米国にも日本の「トローチ」に似たようなOTC喉飴(lozenges)があります。「Sore Throat」(喉の痛みに)と説明書きがされ、箱に入って風邪薬の棚に並ぶ「Cepacol」から、普通の飴と同じように袋に入って何気なく売られている「Ricola」や「Halls」までいろいろです。これらはいずれも喉の殺菌というよりは、メンソール成分やハーブによる喉の清涼感により、イガイガ感を緩和することで、風邪が治る間少しでも過ごしやすくする効果を期待するものです。

4

※基礎疾患がある人は、市販薬であっても服用時に主治医または薬局の薬剤師に相談を。

 

知っておきたいファーマシー用語
OTC(Over The Counter)Drug
=一般用医薬品(俗にいう市販薬)。処方せんがなくても薬局で買える薬。
Active Ingredient=有効成分(薬効を示す物質)。薬の箱の裏に明記されている。

 

樋口聖 Sei Higuchi, Ph.D. 
博士(薬学)、薬剤師(日本の免許)。城西大学大学院・薬学研究科修士課程修了、福岡大学大学院・薬学研究科博士課程修了後、京都大学医学部博士研究員。2015年からコロンビア大学博士研究員として、糖尿病の研究に従事。