元気の道しるべ Story 6 【ぜんそく、 体の痛み】水野加津人さん(48)

元気の道しるべ Story 6
病気になって初めて気づくこと、始めた習慣、出会えた人。
病気をプラスに捉えたら、人生が違って見えてくる。焦らず慌てず生きましょう。

「痛みをつくったのは自分」 自らを知る原点に立ち返る

michisirube_1801_01

 【 ぜんそく(2歳半~20歳)、
体の痛み(腰痛、肩、首痛、右手のしびれ(20~37歳) 】
水野加津人さん(48)

愛知県名古屋市在住
痛み解消メソッド、エゴスキューセラピスト
www.egoscuejapan.com  www.egoscue.com

 師走に入ってすぐの週末、東京お台場でエゴスキューメソッド(以下エゴスキュー)のトレーナー講習が開催されていた。講師を務めているのが水野加津人さん。インタビューの一環として、講習の見学に快く応じてくれた。
 エゴスキューは、生活習慣の中で使われなくなり、正しく動かなくなった無数の筋肉を再教育する運動療法。簡単なエクササイズ(体操)をすることで、腰痛、肩こり、ひざの痛みなどの原因となる、体のゆがみを解消するとされる。例えば腰痛を解消する体操では、地球の重力を使い姿勢の変化を促し、骨盤からつながる大きな筋肉に刺激を与えていくといったシンプルなもので、水野さんによると「誰でもできる簡単なもの」だという。
 水野さんは米国発のエゴスキューが日本で広く知られる前から、本場で個人セラピーを受け、自身の体の痛みを改善しつつ、2007年からエゴスキューを日本で広める活動をしている。現在はベテランのセラピスト、トレーナーとして、数多くのクライアントの健康指導とトレーナーを目指す受講生の育成に携わっている。

ぜんそくで入退院繰り返す
 水野さんは2歳半から20歳まで、入退院を繰り返すほどの重度のぜんそくを患っており、小学校6年生と中学1年生の2年間は国立療養所で治療に専念する生活を送っていた。「子どものころのことは正直あまり覚えていない」、と水野さん。つらかったことは忘れたい、という心理が働くようだと分析する。しかし幸いなことに、長く苦しいトンネルを抜けて20歳を機にぜんそくから回復した。心理的ストレスから脱したことがきっかけだったが、当時はそのことに気づいていなかった。

17年に及んだ治療院巡り
 ぜんそくからは解放されたが、そのころから体の痛みが始まった。就職先で重い物を運ぶ仕事をしているうちに腰痛になり、それから長年に及ぶ治療院巡りが始まり、数えきれないくらいたくさんの治療法を試してきたという。しかし、そのどれも一時的には良くなるが、治癒はしなかった。ある治療院の先生からは、あなたの体はもう良くならない、一生うまく付き合うしかないとまで言われた。治療院に通いながらも痛みは年々ひどくなり、腰、肩、首の痛み、右手のしびれにまで広がった。そんなときに出会ったのがエゴスキューだった。
 「エクササイズを続ける中で感じたのは、『痛みをつくったのは自分だな』ってことだったんです。貴重な気づきでした。それまでは治療院に行って、『治してください先生~』といった受け身の姿勢だったんです。で、良くならなかったら、『この治療は自分に合わないから治療院変えます』みたいなことを繰り返していました。けれど、それは違いました。そもそも原因を作ったのは自分自身。日頃の行動習慣、もしくは行動しない習慣、たとえば長時間椅子に座っているとか。そういう普段の習慣が、痛みの原因である体のゆがみをつくっているのだから、自分の日頃の生活から見直すことが大切ということを学びました」

昨年6月、出雲大社を初参拝。 松江城、足立美術館なども巡った

昨年6月、出雲大社を初参拝。
松江城、足立美術館なども巡った

セラピストとしてのさらなる学び
 「エゴスキューを実際にやってみたら、体の痛みがどんどん軽くなっていったんです。うれしかったですね。そしてセラピストとして、たくさんのクライアントと接することで感じているのは、日頃の習慣が痛みや病気につながっていて、その習慣を生み出す根っこには、その人の考え方の癖があって、本当はそこからサポートしていくのが大切、ということです。だから症状を診るだけでなく、その人自身を診る、その人の背景を知りながらサポートする。それが、痛み解消の早道だと感じています。たとえば、自分の行動が恐れや不安からきているのなら、リラックスしていくようなことをすると、細胞がゆるんだり、ストレスホルモンが減ったりします。でも、物理的に体がゆがんでいても痛みは出てしまいますから、心理的なことだけではなく、ゆがみを直すためのエクササイズも必要です。心身両面からのケアが大切なんです。もちろん、体に良いものを食べ、水も1日1.5リットルくらい飲む。そして睡眠もしっかり取る、というような基本的習慣も重要です。健康づくりには、治してもらうという受け身の姿勢やノウハウより、『まずは自分の習慣を知り改善していくことが重要』という原点に気づきました」

心地良い場のエネルギー感じる
 自然の中で過ごすことが好きな水野さん。心地良い緑の中にいると、体がリラックスしていくのを感じるという。神社やお寺の凛とした空間も好きで、先日は和尚さんとの会話も楽しんだ。最近は茶道を学ぶ機会にも恵まれた。初めてながら上手に点てられたそうで、「センスがある」と褒められたそうだ。「新年を契機に趣味としてお茶を始めたい」と、胸を弾ませている。

水野さんの元気の道しるべ
❶ 体を動かす
❷ ゆったりとした自分の時間を持つ
(朝の1時間から1時間半、エクササイズをしたり、好きな本を読んだり、瞑想したりして体と心を整える)
❸ 最低7時間は眠る

取材・文/渡辺奈月 ヘルス&ウェルネス・コンシェルジュ。米国でファンクショナルメディスン(機能性医学)を学び、ヘルスリトリートにも多数参加。自らの体験も含め知見を深めながら健康や心のあり方に関する情報を発信し、子どもから高齢者まで健康指導も行う。ブログhttp://gogonatural.weebly.com