連載362 山田順の「週刊:未来地図」告発!日本を焼け野原にした“コロナ戦犯”たち(下2-2)

「クラスター」などの専門用語で煙に巻く

 安倍首相がことあるごとに持ち出した専門家会議も、コロナ禍の戦犯と言えるだろう。専門家というなら、科学的知見に基づいて明確なコメントを出すべきだった。それが、いつも明確でなく、なおかつ、揺れ動いた。
 とくにひどかったのはPCR検査の件数が増えないことに関して、言い訳を繰り返したことだ。
  すでに書いたように、PCR検査は、厚労相の鈴木医務技監と、専門家会議座長の脇田隆字氏(62、国立感染症研究所所長)や副座長の尾身茂氏(70、地域医療機能推進機構理事長)などを中心にして決められ、検査数を絞るという世界のどこの国もやらない方法で実施された。
 当初、なぜ、そうしたかという理由を、専門家会議のメンバーたちは、「クラスターを追跡すれば感染拡大は防げる。すべての人がPCR検査を受けられるということになると、医療機関に多くの人が殺到して医療崩壊を起こしてしまう」と説明していた。
 ところが、市中感染が進むと、尾身茂氏は「キャパが足りないから」とポロっと本音を漏らし、自分たちがキャパを狭めてきたことに対して頬かむりしてしまった。4月30日、政府が緊急事態の延長を決めた後の会見では、なんと「PCR検査が迅速にできる体制の構築が求められる」と、まるで人ごとのように言い放った。ちなみに、「クラスター」だの「オーバーシュート」だの専門用語を持ち出して、それがあたかも感染症対策の基本のようなムードを醸し出したのは、尾身氏である。

PCR検査に関しての苦し紛れの言い訳

 PCR検査に関する言い訳で、もっとも国民の怒りを買ったのは、専門家会議のメンバーの釜萢敏氏(67、日本医師会常任理事)と、押谷仁氏(61、東北大教授)の発言だろう。
 4月22日の記者会見で、釜萢氏に、記者から「2月に出された『受診の目安』とどう違うのか」という質問が出たとき、釜萢氏はこう答えた。
「(2月のときは)4日間、経過の様子をみてくださいというようなメッセージというふうに取られたんですが、そうではありません」「少しいつもと違う症状が4日も続くというのであれば、普段はあまり受診されなくても、今回に関してはぜひ相談していただきたい、まず電話で相談をして、その相談の結果、受診が必要になれば医療機関を受診していただきたいということでありました」
 これは、明らかな嘘、言い訳であろう。「37.5度以上が4日以上」とされたのに、「そうは言っていない」とし、「普段はあまり受診されなくても相談して」とまで言ったのだ。
 実際、このとき、電話してもつながらない。繋がっても断わられるという苦情が相次いでいた。
 また、この会見の前日には、感染者が自宅待機中に亡くなったニュースが報じられていた。そして、この発言の翌日、女優の岡江久美子さん(63)が亡くなった。

専門家は意見を180度変えていいのか?

 押谷氏のほうは、4月11日放映の『NHKスペシャル』での発言がひどかった。「現状はさまざまな理由で、PCR検査を行う数が増えていかないという状況です。本来、医師が検査を必要と判断しても検査ができないというような状況はあってはいけない状況だと思います」「十分なスピード感と実効性のあるかたちで検査センターの立ち上げが進んできていないということが、いまの状況を生んでいるというふうに理解しています」
 ところが、このときからさかのぼること3週間。3月22日の同番組で、彼はこう言っていた。
「日本のPCR検査は、クラスターを見つけるためには十分な検査がなされていて、そのために日本ではオーバーシュートが起きていない」「すべての人がPCR検査を受けられるということになると、医療機関に多くの人が殺到して医療機関で感染が広がってしまうという懸念があって、むしろ
PCR検査を抑えていることが、日本が(感染者数が他国より少ない現状で)踏み止まっている大きな理由だと考えられます」
  180度違うとはこのことだ。ここまで臆面もなく反対のことを言うなら、専門家だけに、謝りを認めてからにすべきだろう。
(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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