連載333 山田順の「週刊:未来地図」ゴールデンウィーク明けまでに、日本は「コロナ禍」で「焼け野原」になる! (下)

収束後しても、街の景色、社会の姿が変わる
 緊急事態宣言後、東京都は検査数を増大させたので、それにともない「確認された感染者」(confirmed cases)数が増えた。ここにきて、連日200人近くの感染者が出るようになった。しかし、この数自体には、ほぼ意味がない。なぜなら、サイレントキャリア(潜在的な感染者)がどれくらいいるかまったくわからないからだ。
 すでに東京は、ニューヨーク、パリ、ロンドン並みになっている可能性のほうが高い。
 それなのに、まだ政府は、本気で動かない。PCR検査数を増やさない。「発熱外来」をつくらない。医療現場への人工呼吸器、防護服、サージカルマスクなどの供給を増やさない。そのため、院内感染が多発し続けている。
 こうしたことに業を煮やして、ノーベル賞学者の山中伸弥氏や本庶佑・京都大特別教授などが警告を発し、さらに、徳田安春・群星(むりぶし)沖縄臨床研修センター長などの著名医師らが検査方法の改善まで提言までしたというのに、厚労省はまだ動くそぶりも見せない。
 現在、保健所は、検査申し込み者の急増とクラスター追跡でパンクし、悲鳴を上げているが、厚労省は方針を変えていない。もちろん、厚労省だけがおかしいのではない。すべては、司令塔である内閣府、首相官邸の問題だ。
 この国をいま動かしている人々には、想像力が欠如している。どうみても、いまのままのコロナ禍が続けば、やがて街の景色、社会の姿まで変わってしまうだろう。
 今後1カ月、5月6日まで緊急事態宣言は続く。ここまでに、感染拡大は収束するというのが、政府の見方だが、これはただの「希望的観測」だ。
 百歩譲って希望的観測が実現したとしよう。しかし、そのとき、街はどうなっているだろうか? 多くの小売店、飲食店がなくなっているだろう。小劇場、ライブハウス、フーゾクもなくなっているだろう。これは、コロナ禍が長引けば長引くほどそうなる。
 このように、コロナ禍が長引けば長引くほど、経済難民と失業者は増え、街の姿も社会の姿も変わってしまう。結局、公務員だけが生き残り、貧乏人が増える。そうして、社会全体が行き詰まる。日本政府はそれがわからないのである。
 なぜ、わからないのか?
 それは、彼らが公務員の集合体であり、政治家もまた元公務員が多いからだ。公務員が興味があるのは、自分たちの出世と目の前の仕事だけ。給料は保証されているので、大きな事案を解決しようなどというバカな目標は持たない。ただ、命じられたこと、目の前にある仕事だけをこなして大過なくすごす。
 それにしても、なぜ、公務員給料、議員歳費をカットせよという言論が起こらないのか? 日本人は、ただただ耐える、忍耐力だけは多民族に比べてひときわ高いと言うほかない。
 これまで政府は、日銀に命じて「異次元緩和」を行い、大量のカネを刷らせて国債を引き受けさせ、株価維持のためにETFの大口買いまでさせてきた。それなのになぜ、国民のために配るカネだけを刷り渋るのだろうか?

ニューヨークと同じく「医療崩壊」している
 ついこの間、東京オリンピックの延期が決定される前までの日本はどうだったか?
 ほとんどの報道は「オリンピックはどうなる」一色で、新型コロナウイルスの感染拡大に対しての危機感は薄かった。オリンピックが第一で「完全なかたちで実現を目指す」と首相も言い、都知事も国民も実現を望んでいるというムードが醸し出されてきた。
 そんななか、「即刻中止すべき」と、私は「Yahooニュース」のコラムに書いた。すると、まるで非国民のような目で見られた。世間のムードに水を差す。日本ではこれがタブーなのである。
 東京オリンピックの延期が決まったのは、3月25日である。それからまだ3週間もたっていない。しかし、延期が決まったときから、ムードは一変した。
 いまやメディアは、「東京がニューヨークになっていいのか?」「このまま医療崩壊していいのか?」と、連日、報道している。しかし、私に言わせれば、もう遅すぎる。ツーレイトだ。すでに東京はニューヨークになっていて、医療崩壊もしてしまっているからだ。
 12日、中野区の中野江古田病院で医師や入院患者ら計87人が新型コロナウイルスに感染していたことが発表されたが、これがいい例だ。これは、明らかな医療崩壊ではないか。
 江古田病院に限らず、東京のいくつかの大病院ではコロナ対策のために、外来診察を止め出した。また、ベッドを開けるために、緊急を要しない手術患者の入院を取り止めたところもある。
 すでに、現実のほうが先に進み、報道が追いついていないのだ。
(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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