トランプもバイデンも結局同じか。 アメリカ覇権が後退し続ける混沌世界の到来(完)

グローバルサウスという厄介な存在

 ここまで、アメリカ覇権の後退という観点から、ロシア、中国を中心に見てきたが、欧州とグローバルサウスにも注目する必要がある。
 ただ、欧州に関しては西側なので、アメリカ経済と一体と見てよく、盟主ドイツがアメリカの言うことを聞くかぎりは大きな問題はないだろう。いくら、米大統領がトランプになろうと、欧州はアメリカ覇権のなかでの経済圏、生活圏を維持していくほかない。中立政策を保っていたフィンランド、スウェーデンまでNATOに加盟した。英国も同じである。
 となると、問題はインドやブラジルなどのBRICSとグローバルサウス諸国である。彼らは、アメリカ覇権下における発展よりも、ナショナリズムを重視し、アメリカにも中ロにもいい顔をして、国益を引き出そうとする。
 つまり、中ロを天秤にかけた「コウモリ外交」をやっているから、日本にとっても厄介である。

日本周辺はさらに不安定、きな臭くなる

 こうやって世界を見渡していくと、今後、全世界からあるべき秩序が失われ、混沌さが増していくとしか思えない。いまさら「もしトラ」を騒いでも、それほど意味がないと言えないだろうか。
 ともかく、アメリカがここまで「内向き」だと、次期大統領選でどちらが勝とうと世界は変わらない。
 これは何度も書いてきたことだが、アメリカは現代のローマ帝国である。内向きになって、帝国の覇権を後退させてはいけない。バイデンかトランプの次に、そういう認識の大統領が出なければ、世界の混迷はさらに深まる。
 日本は、中ロとアメリカ、欧州、そしてグローバルサウスにいいように扱われ、さまよい続けるだけになる。
 今後、日本周辺はさらに不安定、きな臭くなるのは、間違いない。いまのアメリカには、北朝鮮の金正恩を抑えつける力はない。しかし、放置しておけば、彼はなにをするかわからない。中国も、タイミングを見計らって台湾併合に乗り出すだろう。
 ただ言えるのは、ロシアはウクライナという地雷を踏んだために、今後衰える。そうして、ユーラシアの内陸国家に押し込められるので、ロシアの脅威だけはなくなるだろう。

求められるのは世界中と折り合う難しい外交

 日本の保守勢力は、憲法を改正して独立軍を持ち、独立国家としての誇り高き日本を追い求めている。アメリカのくびきからも離れることを理想としている。
 しかし、そのためには、崩れた世界のパワーバランスとうまく折り合いをつけていく難しい外交が求められる。
 はたして、日本にそんなことができるのか? 裏金議員ばかりの腐敗した政治家たちにできるわけがないと思う。
 中ロ、北朝鮮の脅かし、グローバルサウスのたかり、そしてアメリカの過度な要求。これらを巧みにすり抜け、経済衰退を防がないと、日本に未来はない。
 大谷翔平、漫画、インバウンド、国債発行だけでは、日本は回らない。(了)

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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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