シカ被害に悩むスタテン島 駆除だけでは済ませられない事情

 米農務省は動植物検疫所と野生動物庁とともに、ニューヨーク州内のシカ被害対策について査定原案を作成し、30日発表した。スタテン島のシカ被害に頭を悩ますニューヨーク市では、この原案を元に市独自の対策案を立てる予定で、市民からも意見を募っている。
 スタテン島では近年シカがその数を増やしており、島内の公園や私有地を荒らす被害が出ているほか、車との衝突事故やシカに寄生するダニが媒介する病気の懸念などがある。昨年の航空測量調査では島全体で763頭のシカが確認されたが、専門家らはその数を1000頭以上と推測している。このためニューヨーク市公園局では今夏、特別組織を作り、州の査定原案をもとに市の対策案の作成を始めた。
 この原案では、被害対策として殺傷駆除策と殺傷以外の防除策の併用を提案しており、殺傷駆除は銃猟や狩猟、安楽死で頭数を減らすことを指し、防除策としては柵やバリケードの建設、シカの移動や威嚇、産児制限など施策が挙げられている。
 しかし市独自の対策案作成にあたっては、動物愛護団体がビル・デ・ブラシオ市長のサポーターであり、市長は殺傷駆除に否定的であるうえ、同市の規定では狩猟が禁止されていることから、併用ではなく殺傷駆除以外の手段が望ましいと考えられている。

Sid Dinsay