夜間裁判の傍聴が観光客に人気? 倫理観問う声も

©Salvatore Vuono


 ロックフェラーセンターやエンパイアステートビルディング、セントラルパークなど、名所には事欠かないニューヨーク市だが、観光客らの間で今ひそかに人気を集めているのが、マンハッタン区の刑事裁判所で行われている“夜間裁判”だ。
 夜間裁判の歴史は古く、1907年に開始された。現在では年間約10万件以上の訴訟を扱い、連日午後5時から午前1時までの間に、70〜90件の裁判が行われている。
 裁判は観光客でも傍聴することができ、最近ではバックパッカーのバイブルとして知られるガイドブック「ロンリー・プラネット」のニューヨーク版最新号にも、情報が掲載されている。同ガイドブックのライターで傍聴についての記事を書いたレジス・セントルイスさんは、掲載の理由について「夜間裁判の傍聴はアンダーグラウンドで、ユニークな体験」だと語る。
 傍聴を希望する人の中には、弁護士などを目指す学生や専門家などに加え、米国社会の在り方やニューヨークならではの犯罪を知りたいという観光客も多い。実際に傍聴した人は、「裁判の進行中に人々がおしゃべりをするなど、くだけた雰囲気であることが意外だった」「手錠をはめられた人が傍聴席に座っていて驚いた」などと感想を語っている。
 また、裁判の関係者は、傍聴者が増えている理由について「さまざまなストーリーが渦巻いていて、本当のドラマと、時には笑える場面も見られる。ある意味ブロードウェーのショーを見るような感覚だろう」と指摘する。
 しかしその一方で、被告人やその家族、被害者などの心情を考慮し、裁判をエンターテインメントであるかのように見物することに意義を唱える人がいることも事実だ。