METオペラ、ライブビューイング中止に 「反ユダヤ的」な風潮が影響

 ニューヨークオペラ歌劇場(MET)は17日、ことし11月15日に世界各国の映画館でライブビューイングが予定されていたオペラ「クリングホーファーの死(The Death of Klinghoffer)」の上映をキャンセルしたと発表した。内容に、一部「反ユダヤ的」な要素が含まれているため、とのこと。
 作曲家ジョン・クーリッジ・アダムズ作の同作品は、1985年に発生した旅客船乗っ取り事件を題材にしており、パレスチナ解放戦線のメンバーであるシージャック犯に人質として取られた車椅子のユダヤ人男性が殺害される様子が描かれている。
 METの総支配人は、今回の上映中止について「反ユダヤ的な作品であるとは思わないが昨今、欧州諸国を中心に広がる反ユダヤ的な風潮を受け、世界中のユダヤ人コミュニティーから懸念の声が寄せられており、キャンセルが妥当と判断した」との声明文を発表した。
 なお、10月20日から11月15日まで全8回にわたって上演が予定されている同オペラのスケジュールに変更はないという。ただし条件として、ウェブサイトや広告には「アダムス氏は米国が生んだ偉大な作曲家であり、中でも『クリングホーファーの死』はとりわけ群を抜く優れた作品」というクリングホーファー氏の娘からのメッセージを掲載することが義務付けられる。
 同作品はこれまでに、ロンドン、ニューヨーク、セントルイス、カリフォルニアで上演されている。