TAX SPECIALIST羽山 徹の税金をはじめとしたお金の話あれこれ Vol.9 会社員並びに個人の事業主が利用できる 「退職後用積立口座(Retirement Plan)」パート⑤

問17:複数のT―IRA口座からそれぞれRMDを引き出す方法と、1つのT―IRA口座からまとめてRMDの合計金額を引き出す方法のメリットは何かありますか?

解答:T―IRA口座から受取人(自分の家族や親族など)にある程度の金額を残したい、と考えている方は、T―IRA口座を複数開設する(例:1つを2つ以上に分散させる)ことにより、それが可能となります。1つのT―IRA口座しか持たないと、必ずその口座の残高は毎年減っていく仕組みになっているので、長生きをすればするほど、残したい額が減ってしまいます。しかし、RMD額を引き出す必要のないT―IRA口座を別に所有すると、RMDで減らされることがない口座残高すべてを、口座の受取人(Beneficiary)に指定された家族や肉親に遺すことができます。このようなT―IRA口座は、RMDがないRoth IRAと同様に、遺産税対策にも活用することができます。

問18:複数のT―IRA口座を持つ方法は、最初から2つ以上を持っておく、などいろいろあると思いますが、他に良い方法はありませんか?

解答:例えば、会社員時代に積み立ててきた401(k)口座、または自営業者時代に積み立ててきた「S/E SEP IRA」口座を、退職後に2つのT―IRA口座に分けてそれぞれにRolloverする方法があります。その際、2つの分配率は、RMD担当の口座の方を多くし、相続担当の方を小さくします。相続担当口座はRMDとは無関係になることで増加が期待できるからです。

問19:この場合、T―IRA口座をRoth IRA口座に「変換(Conversion)」できる方法を利用して、RMDに無関係なRoth IRA口座に変えてはどうでしょうか?

解答:よくご存じですね。その通りです。T―IRA口座をRoth IRAに変換することができます。これを「変換:Conversion」と呼びます。一方、Roth IRAをT―IRAに「変換」することはできません。

問20:この変換に関する注意点は?

解答:変換と言っても、T―IRAをRoth IRAに単に名称を変更するという手続きを取るというものでは決してありません。仮に、単に書類の手続きで、その時点でのT―IRAの口座残高全額が、Roth IRAの口座残高へと名称変更すると、大きな問題が生じます。すなわち、T―IRA口座の積立額と運用益とが、今後はそれぞれRoth IRA口座の積立額並びに、運用益となると、米国国税庁にとって税金の徴収が見込まれなくなるからです。次号に続く。


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羽山 徹
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