飯島真由美 弁護士 Legal Cafe Vol.18 雇用法上での差別とは-年齢による差別

雇用法上での差別とは-年齢による差別

 このコラムでは何回か雇用法上での差別について触れておりますが、今回は年齢による差別についてご説明致します。

①年齢による差別を禁止する米国連邦法(Age Discrimination Employment Act )
 米国では、1967年に雇用において年齢による差別を禁止する連邦法が施行され、40歳以上を対象に、採用、解雇、プロモーション、トレーニングの機会や福利厚生などについて年齢で差別をする事を禁止しています。そのため、日本のように履歴書に年齢を記載したり写真を載せることはなく、面接で年齢を聞くことも違法となります。また、例えば高校の卒業年を聞くのも違法の範囲となります。そのほか、年齢による定年制も原則的に禁止ですが、例外として警察官や消防官、また航空会社のパイロットなどは、安全を目的として年齢による定年制が認められています。連邦法は従業員が20人以上の雇用者が対象となりますが、州法や自治体の法律により、もっと従業員数が少ない会社でも対象となる場合があります(例えばニューヨーク市の人権法では、従業員4人以上の会社が対象)。

②日本の年齢差別禁止法
 日本でも2007年に年齢差別を禁止する法律が施行され、募集・採用による年齢制限は撤廃されました。しかし、その他の項目については規定されておらず(例えば定年制)、また募集・採用時にも広範囲な例外が認められています。また、国家公務員及び地方公務員にはこの法律は適用されず、それに反対する訴訟ではどれも原告が敗訴しています。また違反の際の罰則も行政による指導や勧告など、ごく軽いものとなっています。

③実際の年齢差別訴訟の例
 米国で日系の会社(現地法人)の年齢差別訴訟に一部関わりましたが、そこでは60歳になった社員が定年退職するか、降格を受け入れるかを強制されとして会社を訴えました。原告が日本の親会社の社員か、現地法人の社員かで争われましたが、結局は現地法人の社員という事で米国法が適用されるという判断でした(両者はその後示談)。決め手となったのは、社員が受け取った手紙にはっきりと「60歳になったために」退職奨励、または降格を受け入れるようにと指示があり、これが年齢差別と判断されました。

☆法律の詳細についてはwww.ada.govをご参照、あるいは専門の弁護士にお尋ねください。

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飯島真由美 弁護士事務所
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NY州認定弁護士。法政大学文学部、NY市立大学ロースクール卒業。みずほ銀行コンプライアンス部門を経て独立。2010年に飯島真由美弁護士事務所を設立。家庭法、訴訟法、移民法など幅広い分野で活躍中。趣味はカフェ巡り。