大竹彩子(焼酎&タパス 彩) 焼酎ソムリエの「つまみになる話」毎月第4月曜号掲載 第一回 いいちこが好きになる

大竹彩子(焼酎&タパス 彩) 
焼酎ソムリエの「つまみになる話」毎月第4月曜号掲載 

第一回 いいちこが好きになる

 記念すべき1つ目の「つまみになる話」は『いいちこ』と決めていました。と言うのもきっと誰もが知っていて、多くの人が一度は飲んだことがあるであろう名酒ですが、意外と深くは知られてないのでは、と思ったからです。
 いいちこの製造元、いわゆる蔵の名前は三和酒類株式会社といい、実は元々、日本酒のメーカー。そう、焼酎を造る蔵ではなかったのです。こちらは私もびっくりで、同蔵はいいちこの産地でもある大分県で葡萄を作り、ワイナリーまで持っているそう。いいちこの蔵が造るワイン、一度飲んでみたいですね。
 余談はこれくらいにして、本日の主役、いいちこのお話。「いいちこ」の意味をご存知ですか? これは地元、大分県宇佐市の方言で「いいですよ」という意味なのです。当時焼酎に力士のような男らしい名前を付ける蔵が多かった中、いいちこのようにやわらかいひらがなの焼酎は大変珍しかったそう。 女性でもバーや居酒屋でオーダーしやすいこのネーミングはメーカーさんの優しさを感じますよね。いいですよ、と向こうから話しかけてくれているような。そして、いいちこの愛称で有名な「下町のナポレオン」は一般公募で募集、採用されたという話は有名かと思いますが、別府市のある看護師さんが応募したハガキに、一度消しゴムで消された筆跡が残っていました。実はそこにあった言葉が「下町のナポレオン」だったのです。

 そろそろいいちこを片手に一杯やりたくなった頃かと思いますが、いいちこはご存知の通り、日本一有名な麦焼酎。2003〜11年まで9年連続で売り上げ全国1位。 次の年、残念ながらどの蔵元に首位を譲ったかは別の機会にお話するとして、現在米国で販売されているいいちこは4種類。いいちこシルエット、清凛、黒瓶、フラスコです。何が大きく違うかというと〝ブレンド〟なんですね。同蔵にはなんと数十種類ものいいちこの元となる原酒が貯蔵されており、これらをそれぞれ繊細に異なる割合でブレンドし、各商品の味にしていくのです。特にフラスコはどうしてあんなに高価なのかというと、原料の麦を日本酒の大吟醸のように約50%磨き、その芯の貴重な部分だけを使用しているから。そうすることにより雑味の元を取り除くことができ、フルーティーな香り・味に仕上がります。元々日本酒の蔵である三和酒類(株)ならではの発想と技術だったわけです。
 いいちこが初めて発売されたのは1979年2月。今月で36歳の誕生日を迎えます。

本日の〆
 本日シメのつまみになる話、三和酒類(株)さんから届いたいいちこへの想いを皆様に。「世界の蒸留酒“スピリッツ”のレベルまでSHOCHUの文化を世界に広めたい。世界で有名な蒸留酒にはVodka, Tequila, Gin, Rumといったものがありますが、焼酎も世界的にみるとその仲間です。日本が誇るジャパンスピリッツ(蒸留酒)『SHOCHU』が世界中のBARで飲まれる『世界の酒SHOCHU』になれるよう頑張ります。」


大竹彩子
東京都出身。2006年、米国留学のため1年間ミネソタ州に滞在。07年にニューヨークに移り、焼酎バー八ちゃんに勤務。13年10月に自身の店「焼酎&タパス 彩」をオープン。焼酎利酒師の資格をもつ。

焼酎&タパス 彩
247 E 50th St (bet 2nd & 3rd Ave)
212-715-0770 www.aya-nyc.com