大竹彩子(焼酎&タパス 彩) 焼酎ソムリエの「つまみになる話」毎月第4月曜号掲載 第三回 三十路の酒、白岳しろ

大竹彩子(焼酎&タパス 彩) 
焼酎ソムリエの「つまみになる話」毎月第4月曜号掲載 

第三回 三十路の酒、白岳しろ
 今回は米焼酎「白岳しろ」のストーリーをつまみに一杯いかがでしょう。「白岳しろ」は1985年産まれ。私事ですが同い年の今年でちょうど30歳(三十路)。製造元である高橋酒造(株)は米焼酎の出荷量ダントツの1位を誇る蔵です。米焼酎の代名詞とも言える同商品はボトルも和紙のラベルも真っ白で、バーや酒屋に並んでいても一目でわかるほど人を惹きつける凛としたデザイン。ネーミングからデザインまで、なぜそこまで「白」にこだわるのか、そこにはちゃんと理由があるのです。
 「白岳しろ」が産まれる少し前、米国ではナショナルドリンクであるバーボンウィスキーを抜き、ウォッカやジンといった蒸留酒の消費量が上回りました。その波はヨーロッパまで広がり、無色透明なスピリッツが世界中でブームに。いわゆる 〝White Revolution(白色革命)〟です。やがて日本にも波及し、1983年に焼酎はウィスキーを抜き、ビール、清酒に次ぐ第三の酒となりました。高橋酒造はこのブームを受け、品が良く、ウィスキーのようにロックや水割りで堪能できる焼酎造りに励み、「氷との調和を大事に」という条件のもとに誕生したのが「白岳しろ」でした。まさにこの時代のWhite Revolutionが産んだ焼酎なのです。原料であるお米の白さをも彷彿とさせるネーミングとボトルデザインはこのためだったのですね。

 米焼酎のほとんどは熊本県で造られていますが、「白岳しろ」はその中でも球磨焼酎と呼ばれる限られた種類の一つ。これは熊本県最南端に位置する球磨郡と人吉市という400年以上前から米焼酎造りをしている伝統のある地域で白米を100%原料に、その地域の水を使い造られた焼酎にのみ付けることのできる呼称です。一見難しく感じるかもしれませんが、いわばシャンパーニュ地方で造られたもののみをシャンパンと呼ぶのと同じようなもの。
 このようにこだわりの米と水を使い30年変わらぬ味で「ブレない」同焼酎は、健康維持にも効果的。含まれる成分が血液中の血栓を溶かす酵素を活性化することが熊本県立大学による実験で実証されており、心筋梗塞や脳梗塞を防ぐことが期待されています。さらに、お米がお肌に良いのは有名な話で、健康だけでなく美容効果もバッチリな「白岳しろ」。現代のWhite Revolutionの火付け役になる日も近いのでは。

本日の〆
高橋酒造(株)代表取締役社長
高橋光宏氏からのメッセージ

1900年(明治33年)の創業以来、人吉・球磨の地域において本格米焼酎造りにこだわってきました。私たちが造るのは単なる米焼酎ではなく、400年以上の歴史を持つ球磨焼酎でもあります。私たちの造る本格米焼酎の原料は、米と水のみ。日本人がもっとも愛着を持つ原料ともいえる米だからこそ、ごまかしが利きません。厳選した米と水を、確かな腕と誇りを持った職人たちが伝統の技を駆使し、そして日々の革新へのたゆまぬ努力を続け、最高峰の本格米焼酎造りに生かしています。


大竹彩子
東京都出身。2006年、米国留学のため1年間ミネソタ州に滞在。07年にニューヨークに移り、焼酎バー八ちゃんに勤務。13年10月に自身の店「焼酎&タパス 彩」をオープン。焼酎利酒師の資格をもつ。

焼酎&タパス 彩
247 E 50th St (bet 2nd & 3rd Ave)
212-715-0770 www.aya-nyc.com