アメリカの大学合格までのプロセス Satori College Planning(1)

 アメリカ大学合格へのプロセスは、非常に複雑だ。生徒の資質と学力はもとより、毎年更新される情報をいかに正確に把握するか、が大きな割合を占めるといっても過言ではない。近年ニューヨークでも、大学進学やファイナンシャル・エイドに関しての日本語セミナーが開かれるようになった。そのひとつ、サトリ・カレッジプランニング(http://satoricollegeplan.blog.fc2.com/) の 代表でカレッジコンサルタントの伴里美氏のセミナーからのアドバイスを2回に分けて紹介する。

サトリ・カレッジプランニング代表、伴里美氏。

人の役に立ちたい

 今年3月マンハッタンで開催された「アメリカの大学合格までのプロセス」のセミナーでは、 「知っておきたい用語」、中学生から高校の各学年で必要な「準備の進め方」、「大学が考慮するポイント」、そしてファイナンシャル・エイドの基礎が説明された。セミナーの参加者は中学、高校生の保護者が中心だか、就学前の保護者の参加もあるという。
 「アメリカ大学進学のプロセスは大変複雑です。ファイナンシャル・エイドの情報だけでも一冊の本になるほどです。また、耳にする情報には間違ったものも含まれています。最新で正確な情報は安心に繋がります。それらを日本語で伝えることで、受験生とその家族の役に立てればと願っています」と伴氏。
 日本で海外留学のカウンセラーをしていた。米国移住後、自分の子どもの大学進学を機にアメリカの進学制度に強い興味を持った。現在はカレッジコンサルタントとして、全米及び、世界各国からの問い合わせに応え、エッセイ指導や、9〜11年生から大学合格までの個別サポートをする。「生徒や父兄の質問には、メールなどでその日のうちに応答しています。」ときに不安になる生徒の気持ちを第一に考える。

何かひとつを極める力

 アメリカの大学願書はオンラインのコモンアプリケーションで行われるのが一般的。2015年現在、約500校が参加しており、出願者はひとつの願書で複数校出願できる。基本的に生徒個人のプロフィールとして必要なのは
①成績証明書、②SAT/A
CTスコア、③パーソナルエッセイ、④アクティビティ(課外活動、インターン、ボランティアの実績)⑤推薦状 ⑥各大学によるポートフォリオの提出などで、日々の学業と活動の積み重ねが問われる。
 加えて人種枠、卒業生の親族・子孫が優先的に入学できるレガシー枠、ファーストジェネレーションと呼ばれる、大学卒業生が過去に皆無だった家庭出身者枠などの経済的、社会的背景が各大学で考慮され、これらを総合的にみて大学の欲しい人材が判断される。
 「大学が見るのは、生徒の現在の状況と同時に、今後どうなるかの将来性です。特に高校生以前の業績は未来の可能性に繋がらなければ評価の対象になりません」と伴氏。
  スポーツや芸術での全米レベルの活躍だけがすべてではないと伴氏。「リーダーシップ、ボランティア、地域活動、趣味、自分のウエブサイトやブログなど、本人が情熱を持って打ち込み、自分の言葉で自分にしか語れないものがあること、それが評価に繋がります。」
 「人間評価」を重視するアメリカの大学進学。日本の受験一発勝負とはまったく異なるアプローチになってくる。

中学時代にできること

 中学時代には「好きな学科や趣味は何か、熱中できるものを見つけましょう。できれば2、3個以上あればいいです」と伴氏。また苦手な教科がある場合、頑張って平均点以上に上げておくこと。中学の成績で高校のスタート地点が違ってくるからだ。
 「Johns Hopkins Center for Talented Youthなどのプログラムに参加したい場合、
SAT/ACTを受けることも考えられます。スコアは1年で記録から消えますので悪くても後に影響はありませんし、プログラムに参加できれば大学選抜の評価になります」と伴氏。
 高校受験の時は、高校により大学進学カウンセラーの守備範囲も違うで、 各高校のウェブサイトでそれぞれの大学進学状況をリサーチしての受験準備を勧める。
 そして「読書」。伴氏は大学進学プロセスで、12年生まで一貫して「読書」を続ける大切さを強調する。

参加者個々に丁寧に対応する少人数セミナー。

高校時代に心がけること

 高校では能力別にいろいろなクラスがあるが、特に主要科目は自分のできる範囲内で少しチャレンジングなアドバンスクラスをとり成績をキープすることをアドバイス。
 これまでやってきたスポーツや趣味の他にも、興味のわく活動を探すことを奨励する。「好きなクラブがなければ自分で作って部長になればいいのです。」
 後の願書作成に役立つ資料の整理の意味で、「9年生からのすべてのクラブ活動、ボランティア活動、学校内外の賞を記録する」こと、「良いグレードをもらったペーパー、テスト、作品を保管する」などのアドバイスも。
  「インターンやボランティアは、幅広くやるよりは、興味のある方向に集中するほうが良いです。チャリティーコンサートを主催するなど、社会貢献のために寄付金を募る活動は、アメリカ社会では大変高く評価されます」など、日本人の視点では気付きにくい点も挙げる。
 ひとつの大学に、全米から数万と寄せられる願書。その中でいかに個人の独創性と将来性を浮かび上がらせるかが、アメリカ大学受験成功の鍵になる。そのために大事なのがパーソナルエッセイになる。【次回7月号に続く】(文=河原その子)

アメリカ大学お役立ちサイト/書籍

大学のリサーチ(書籍)
Fiske Guide to College/Publisher: Sourcebooks
Insider’s Guide to College/Publisher: St. Martin’s Griffin
College Handbook/Publisher: College Board

大学のリサーチ(ウエブサイト)
The College Board www.bigfuture.collegeboard.org
The Princeton Review www.princetonreview.com
U.S. News & World Report www.usnews.com

願書提出
コモンアプリケーション www.commonapp.org

ファイナンシャル・エイド
CSS/Profile(私立大学用エイド) www.collegeboard.org
FAFSA (連邦政府のエイド) www.fafsa.ed.gov
スカラシップ情報サイト www.fastweb.com
Net Price Calculator (必要なエイドの計算式) www.finaid.org