NYC公立学校の新しいオンライン生徒個人情報システム始まる NYC Schools Account

 ブルームバーグ市長時代の2002年に導入された、公立学校生徒の成績や出席状況などの個人情報を、保護者や教師がオンラインで確認できるシステムARIS(Achievement Reporting &Innovation System)。80億ドルという公的資金を投入したが、学校スタッフの利用率は50パーセント以下、保護者にいたっては利用率3パーセントという不評のうちに、昨年末システムは終了した。
 それに変わる新システム、NYC Schools Account(以下スクールズアカウント)が今年6月8日から発進した 。シンプルで見やすく、多くの保護者や学校スタッフの利用が期待されるシステムがどんなものか見てみよう。

子どもの学業情報をネットでチェック

 スクールズアカウントは、公立校在学中の生徒や保護者が、学業関連の情報を、コンピュータ、スマートホン、タブレットから閲覧できるシステム。現在、2015年6月までの学年ごとの①出席、遅刻日数(Attendance)、②各期の成績表(Grades)、③生徒の基本情報(Student Profile)が閲覧できる。(図1)
 欠席、遅刻回数と欠席日、各学期の成績表の一覧、生徒氏名、住所、生徒のID番号、保護者氏名、電話番号が掲載されている。
 今後、ARIS同様、州統一テストや、その他学外テストのスコア、高校のクレジット数に加え、過去の記録も追加される予定だ。つまり、この一カ所で生徒個人の義務教育期間中の記録を閲覧できるのだ。

図1)NYC Schools Account生徒個人ホームページ

個人情報の保護は?

 外部業者に業務依託をしたARISとの大きな違いとして、新システムはニューヨーク市教育局がアドミニストレーターとなるため、データが第三者機関に触れることは一切ないとされる。サイトを閲覧できるのは、保護者や生徒の他、各学校職員、スタッフ関係者となる。医療機関で共有される電子カルテと役割は似ているといえよう。

登録の手順―アカウントクリエイション・コード

 登録できるのは、両親もしくは法的に認められた養育者で、生徒と同じ住所に居住している者に限られる。
 現在ニューヨーク市公立学校に在籍する子どもは、夏休み前の6月、学校から生徒個人に発行されている「アカウントクリエイション・コード」を受け取っているはずだ。手元に無い場合は、学校に写真付きIDを持参して直接受け取る。電話やメールでは教えてくれない。
登録に必要なもの:
①アカウントクリエイション・コード
②スチューデントID(成績表に記載されている。分からない場合は学校へ問い合せる)
③保護者のメールアドレス
④学校を訪問して登録する場合は保護者の写真付きID(運転免許、パスポート、IDNY)
2通りの登録方法:
①アカウントクリエイション・コードを使用してオンラインログインページ(表1)で登録。(図2)
②学校に直接出向いて登録。その際テンポラリーパスワードを受け取る。
 アカウント作成後は「Manage My Account」ページで、メールやパスワードの変更が行える。また2人目以降の子どものアカウントを追加することができる。

図2)NYC Schools Accountログインページ

スクールズアカウントの活用法

 過去のARISが活用されなかった理由として「余計な情報が多すぎて、サイトのナビゲートが面倒」「必要なデータは学校で分かるので、アクセスする意味がない」が挙げられている。
 実際、6月発進時に掲載されている欠席遅刻日数と成績はすでに学校から受け取っているため、わざわざアクセスする必要性はない。現時点でネットの利点を生かせるのは、夏休みに発表される州統一コモンコアテストのスコアを、休暇中どこにいてもネット上でいち早く知ることできる点だ。中学・高校受験にとってこのスコアは大きな意味があり、結果次第で、夏休み中の準備や新学期からの行動プランを練ることが可能だ。学校時代の成績すべてが一カ所にまとめられている保管庫的な役割もある。しかしもっとも重要な点として、記載記録の間違いの発見・訂正が挙げられる。

「間違いは必ずある」と思ってチェック

 電話番号、住所、名前のスペルに始まり、欠席遅刻回数、成績表の数値、テストスコア、今回はまだ掲載されていないが、生徒の人種、ESLのステイタスなどの記載ミスは実際多い。これらのデータは、ダイレクトに進学、受験に影響するので、欠席1日の間違いでも見逃さないつもりでチェックしよう。
 間違いを見つけた場合は学校へ連絡する。学校は直接データベースにアクセスできないので、教育局へ訂正を報告することになる。しかし連絡ミスなどで、報告したにもかかわらず訂正されないままという場合もある。学校側のファイルが訂正されていても、スクールズアカウントの記録が公式記録として使用されるので、訂正を要求した後、現実に反映されているか必ずチェックしておきたい。

保護者の意見を届ける

 シンプルで見やすくても、知りたい情報が得られなければ意味がない。現在アカウント各ページ左下の「Suggestion」リンクから誰でもメッセージを送れるようになっている。
 ARISではテストスコア
が問題のエリア別に開示されており、今回もこの情報を望む保護者は多い。そのような希望を積極的に「Suggestion」を通して教育局に伝えることで、保護者にとって真に役立つシステムになるといえよう。(文=河原その子)

表1)
ニューヨーク市教育局
NYC Schools Account ログインページ http://schools.nyc.gov/myaccount
NYC Schools Accountについての説明 http://schools.nyc.gov/nycschools
参考記事
新データシステムについてのNYタイムズ記事
『New York City Creates Replacement for Student Data Website』 http://www.nytimes.com/2015/06/03/nyregion/new-york-city-creates-replacement-for-student-data-website.html?_r=0