大竹彩子(焼酎&タパス 彩) 焼酎ソムリエの「つまみになる話」毎月第4月曜号掲載 第八回 最新焼酎ランキングまとめと近年の焼酎事情

 さて、前回のコラムで黒霧島を代表ブランドに持つ霧島酒造を取り上げ、それに加えて毎年8月に帝国データバンクから発表される前年の焼酎メーカー売り上げ高ランキングのお話をしました。予定通り、前回号が発行された2日後に同ランキングが発表されましたが、読者の皆様の中には結果が気になっている方もいらっしゃるのでは、と今回はいつもの銘柄㊙ストーリーではなく、2014年の焼酎ランキングの結果から最新の焼酎事情を少しお話したいと思います。
 焼酎ブームが頂点に達し売り上げ高ピークだった07年を最後に、焼酎の売り上げは毎年減り続けていましたが、今回は6年ぶりに前年度を上回りました。近年、サントリー角ハイボールや朝のNHK連続テレビ小説「マッサン」で火が着いたウィスキーブームで圧された中、大健闘と言える結果でしょう。
 そんな中、今回の一番の注目はというと、前回のコラムで少し触れた県別売り上げランキングです。とうとう焼酎王国鹿児島を宮崎が抜くのでは、という噂があったのですが、結果は鹿児島が逃げ切り首位を堅持しました。メーカー別では見事、霧島酒造(宮崎県)が3年連続の1位でした。とひとまず鹿児島焼酎ファンがホッと胸をなでおろした矢先、先日7日に鹿児島県酒造組合が14酒造年度(14年7月〜15年6月)の出荷量ランキングの集計の結果、宮崎に首位を明け渡したと自ら発表し、焼酎業界、ファンの間に衝撃が走りました。鹿児島県の焼酎といえばWTO(世界貿易機関)から芋焼酎の産地指定を受け、「薩摩焼酎」ブランドを掲げ、代表メーカーにはさつま白波や黒白波で有名な薩摩酒造、海童の濵田酒造、桜島の本坊酒造、薩摩一の若松酒造、黒伊佐錦の大口酒造とそうそうたる面々。前出の売り上げ高ランキングでも上位50社の内の23社は鹿児島県のメーカー。それに対し、宮崎県は7社で、やはりトップの霧島酒造(売り上げ高なんと約566億!)が今回の最新出荷量ランキングの宮崎県初首位に大きく貢献した形となります。そんな霧島酒造(株)は今年4月に霧島ホールディングス(株)に商号を変更し、持株会社になったそう。1000億円企業を目指し、独走を始めたばかり。その後を追うのが三年前に首位を奪われたいいちこの三和酒類(株)(大分県)で、こちらは代表ブランド「いいちこ」一本で根強い勝負を続ける。長年3位をキープし、安定感の薩摩酒造(株)(鹿児島県)は、ことしさつま白波と黒白波をリニューアルしたばかりで来年発表の今年度のランキング結果が今から楽しみです。
 焼酎ブームが去った今、焼酎業界は苦境を強いられながらも、新商品発売や、品質向上によるリニューアル、芸能人を起用したCMなどで、新しい顧客の獲得に奮闘しています。海外展開も更に活発化している近年、ニューヨークでは地元のリカーショップでも焼酎を入手できるようになったほど。私たち海外の消費者が遠巻きながら少しでも焼酎業界復活への陰の立役者となれたら嬉しいですね。

本日の〆
今回の同ランキングで前年比から大きく売り上げを伸ばしたのが屋久島の「三岳」(芋焼酎)。一時は焼酎通の間を中心にブームとなりプレミアがつくほど入手困難でしたが、最近ではオンラインショッピングなどでも買えるようになったようです。日本に訪れた際にはぜひ試してほしい粋な1本です。


大竹彩子
東京都出身。2006年、米国留学のため1年間ミネソタ州に滞在。07年にニューヨークに移り、焼酎バー八ちゃんに勤務。13年10月に自身の店「焼酎&タパス 彩」をオープン。焼酎利酒師の資格をもつ。

焼酎&タパス 彩
247 E 50th St (bet 2nd & 3rd Ave)
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