TAX SPECIALIST羽山 徹の税金をはじめとしたお金の話あれこれ Vol.16 米国公的年金の種類: 退職年金―その②

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問⑥:配偶者が受け取る年金、配偶者年金(Dependent Benefits)に関して興味深いので、説明してください。
解答:Aさん(62才)とBさん(64才)のご夫婦の場合、将来2人とも、ご本人の退職年金と「配偶者年金:相手配偶者の退職年金の50%分」の両方を受け取ることが可能です。但し、2つを同時に受給することはできません。例えば、Aさんは、Bさんの退職年金の半分(50%)である、配偶者年金をまず受給し始めてから、自分がFRA(66才)になった時、あるいは70才になってから本人の退職年金を受給開始することができます。もちろんこの場合、Aさんが受け取り始めるBさんの二分の一の配偶者年金より、Aさん本人の退職年金の方が多いことが前提です。ただし基本的には、ご夫婦間の配偶者年金は、相手の配偶者が本人退職年金を受給申請していないと、受け取ることはできません。

問⑦:この例で、仮にAさんは早めに配偶者年金を受け取りたいと思っているのに反し、Bさんは70才まで繰り下げたいと計画していると、Aさんはなかなか配偶者年金を受給できないことになりますが、何か良い策はあるのですか?
解答:はい、「Claim(File)and Suspend」という方法がこの問題を解決してくれます。まず、Bさんが2年後の66才(FRA)になった時点で、SSA(米国年金機構)に自分の退職年金受給の申請書を提出します。それにより、Aさんは、配偶者年金の受給申請をすることができ、直ちに受給が開始されます。一方、Bさんは受給申請と同時に受給の中断を申し立て、受給開始を延長させます。これにより、Bさんは自分の退職年金の受給を、最長70才まで繰り下げることが可能となります。

問⑧:そして、Aさんは自分がFRAになってから、または70才まで繰り下げて、配偶者年金から本人の退職年金に変更させるのですね?
解答:その通りです。但し、注意事項があります。それは、この例でAさんは、自分がFRAになる前(64才)に配偶者年金の受給を開始しています。従って、Aさんが受け取る配偶者年金額は、BさんのFRA時の額の50%ではなく、繰り上げた2年分(66才―64才=2年間)割引された金額となります。そして、いよいよAさんがFRAに達した時に申請して受け取る年金額は、この割引率が適用され減額された金額となりますのでお気を付けください。もちろん、最長70才まで繰り下げて得る年金額も減額の対象です。

問⑨:配偶者年金に関して他に知っておく点がありますか?
解答:Aさんの元配偶者(Ex-spouse)Bさんは、Aさんの配偶者年金(Aさんの退職年金の最高50%)を申請受給することができます。そのための条件は、①BさんはAさんと「10年以上」の婚姻関係にあった。②AさんBさんともに62才以上である。③Bさんは「未婚:unmarried」である。④離婚後2年以上経過している(但し、Aさんが既に年金を受給開始している場合は、Bさんは離婚直後の申請が可能)。ここでの注目点は、62才以上のBさんが、Aさんの配偶者年金を受給するためには、Aさんが62才を超えていれさえすれば、本人が退職年金の受給申請をしていなくても、配偶者年金を受け取ることが可能である、という点です。但し、Bさんが配偶者年金を受給開始後、再婚した場合には、この配偶者年金の支給は停止されます。そしてさらに、Bさんが再離婚した場合、Aさんの配偶者年金の受給資格を再利用できるので、受給再開することもできます。


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羽山 徹
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