Dr.クララ・リー Dr.リーのデンタル日記 毎月第1火曜日掲載 Vol.49 一番緊張させられた、 小さな患者さん

「大好きな仕事に就け、さすれば生涯、一日たりとも労働せずにすむ」
 この有名な格言、誰の言葉かなとある日インターネットで調べてみたら、孔子によるものでした。該当したどのウェブサイトにも仙人のような中国の老人の絵が付いてきました。白ひげの賢そうな老人の言葉なら、含蓄ある教えだとすんなり受け取ってしまうものです。
 実際、この格言は歯医者の私にズバリ当たっています。毎朝、起きた瞬間から仕事に行くのが楽しみで、朝一にコンピュータの患者さんリストを見るとわくわくします。だってこの患者さん全てを痛みから救ってあげて、笑顔で帰る姿を見られるのですもの。ほとんどの患者さんは、何年も通ってくれているおなじみさんなので、毎日、長年の友人に久しぶりに会うような気分になれるのです。
 でも先日の朝、スケジュールを見るなり緊張してしまいました。初めて歯医者に来るわずか4歳の少女の名前なのに、心配でドキドキしてきました。何故かというと、私の姪っ子だったからです。とても素直でお行儀も良く、礼儀正しい子で、何より私のことが大好きなのです。ここが肝心で、このままずっと叔母として慕って欲しいのに、歯医者だからと私を恐がるようになったらどうしよう? 最初から口の中を見せてくれなかったら?それよりまず大きな診察台に座ってもくれなかったら?いきなり泣き出したら?と不安になってきました。子どものころの痛い歯医者体験が脳裏から離れず、大人になっても歯医者恐怖症というのはよくある話。なんとしても面白い体験にしようと心に決め、まずは姪っ子に、私のアシスタントとしてゴーグルとマスク、ラテックスグローブを着けさせ、パパとママの歯のチェックのお手伝いをさせました。それが終わると姪っ子の方から「今度は私の番?叔母ちゃんに私の歯も診てもらいたい!」と言ってきました。(彼女のパパとママは良い親の見本です!)
 内心、「やった!姪っ子の初めての歯医者は超楽しい体験になりそう」とガッツポーズ。これから私がどうやって歯のチェックをするのかと使う器具の用途を、玩具の使い方のように説明し、一緒に歯を数え、彼女の歯をぴかぴかに磨き上げ、フッ素を塗り、おまけに初めての歯医者さん体験の記念写真まで一緒に撮っちゃいました。もう完璧!! 姪っ子には緊張のかけらも無く、私はここで安堵のため息。心配する必要など、無かったのです。6カ月後の定期健診で、また姪が来院するのが楽しみです。


Waterside Dental Care

Dr. クララ・リーClara Lee, DDS

ニューヨーク大学歯学部卒業。ニューヨーク大学ブルックデール病院でチーフレジデントを経て、13年以上にも及ぶ臨床経験は、一般歯科、コスメティック、インプラントを含む。インビザライン認定医。Waterside Dental Care医院長として古山医師と共に、多くの日本人患者を治療。Dentistryをこよなく愛している。
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