私立高校への受験と入学について New York City Private High Schools

 前回に続き、異文化子育て・金融業界でのキャリアを活かしたライフコーチであるマックギネス美和さんが代表を務める「異文化生活情報発信:NY La Vie」主催の「NY学校説明会5W1H」が、ビアンキ曉子さんを講師に迎えて開催する私立学校セミナー2回目をお届けする。前回の私立学校のためのファイナンシャルエイドに続き、今回は、私立高校受験と私立の魅力についてだ。

少人数制の説明会で、参加者ひとりひとりの質問に細やかに答える曉子さん。

少人数制の説明会で、参加者ひとりひとりの質問に細やかに答える曉子さん。

私立高校受験のためのプロセス

 アメリカの私立学校は、キンダーから高校卒業までの12年生が一般的だが、次に多いのが中学卒業の8年生まで。そのため私立学校へのエントリーポイントで一番多く生徒を募集するのは、キンダーに続き、高校入学の9年生となる。私立から私立への編入、公立学校からの編入などいろいろなケースがあるが、私立学校選考基準として採用されている統一テストの内容と形式が、公立学校で行われている州統一テスト(コモンコアテスト)と違うため、公立学校から私立高校を受験する生徒は、そのテスト準備をすることになる。
 私立高校受験は日本の高校受験とは異なり、一斉入試日というのもはない。願書提出の際の必要書類は各学校の指示に従い、エッセイ、写真、在校生の知り合いの名前、中学の成績表、各主要教科のレポート、在学中に書いたエッセイ、子供をよく知る者からの紹介状などを用意する。それらに加えて、ISEE (The Independent School Entrance Exam) もしくは、SSAT (Secoundary School Admission Test) のテストスコアを提出し、指定された日時にスクールツアーと面接に赴く。
 ISEEは1年に一度しか受けられないため、中学2年目の7年生で力試しを兼ねて受ける生徒も多いという。SSATは1年に数回受けられる。テスト結果は各テスト機関から出願校へ一括で提出される。
 現在はウェブ上での出願が主流なため、夏休み中の8月から出願が始まると、曉子さんは言う。学校説明会(オープンハウス)をその前の春に開催するところもある。

私立受験のサポート団体(リスト1)

 公立学校進学は、ニューヨーク市教育局(DOE)が一括管理しているが、私立学校にとってDOEのような場所が非営利団体ISS
AGNY (Independent Schools Admission Association of Greater New York) だ。全てではないが、 主要な私立学校は加入しており、キンダーから高校まで、受験に関わる日程、必要事項、 受験情報の掲載の他、加盟校全ての合否結果同日発表などが行われる。
 Parents League of New York では受験説明会、私立高を一堂に招いての受験フェアや、セミナーが行われている。有料会員制だが、会員にならなくてもセミナーなどの参加は可能だ。
 初めて私立を受ける家庭は、テスト準備を含め、1年以上前からの準備が必要そうだが、「願書締め切りは秋なので、夏休みになってから、思い立っても、まだ大丈夫です。そういう方も沢山いらっしゃいます」と曉子さん。公立と私立校を併願する家庭も多いという。

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リスト1)私立学校関連のお役立ちサイト
●ISAAGNY(Independent Schools Admissions Association of Greater New York)
www.isaagny.org
私立受験の学校と入試情報全般

●ERB(Education Records Bureau)
www.prepforprep.org
5年生以上の有力人種のNY市の私立学校以外に在学中の生徒のサポート

●SSAT(secondary School Admission Test)
www.ssat.org
私立受験のテストSSATに関する情報

●Parents League of New York
www.parentsleague.org
私立学校受験ファエや説明会の開催。アドバイスなど
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セミオーダーメイドの教育環境の素晴らしさ

 前回のファイナンシャルエイドに加えて、高校からの私立入学を紹介したが、私立学校に興味があれば、学費だけで判断しないで、いろいろな方法や、前回紹介したサポート団体を利用することで、可能性が生まれること、また、私立学校の持つお金持ちの学校というイメージだけでなく、実際の特色豊かな教育内容にも、曉子さんと主催者の美和さんは、是非目を向けてみて欲しいという。子供の特性にぴったりで、のびのび学べる環境が見つかるかもしれない。
 私立の魅力として、曉子さんは、選択の幅の広さを挙げる。 キンダーの場合、通常のバースデーカットオフは8月31日であるが、春、夏生まれの子どもは、入学を翌年に遅らせる事が可能となる。子供の成長に合わせて、入学時期を選ぶことができるのだ。
 教科のフォーカスもテクノロジー、スポーツ、アート、語学など、それぞれの学校の特色で選ぶことができる。学校によっては、5人集まると、自分たちのやりたい課目を作ることもできるという。 校風により先生や、生徒、学校の雰囲気もさまざまだ。少人数制のため生徒ひとりにつき先生のアテンションも公立に比べて格段に大きい。
 また、大学受験を控えた高校生への魅力として、アメリカ大学受験で重要視される課外活動や、インターンシップの種類の豊富さ、各界へのコネクションの多さも挙げる。
 大都市ニューヨークでは特に学校の種類も数も多く、ISAAGNY加入校は140校以上に及ぶ。教育内容も伝統的な校風から、革新的なものまで実にさまざまで、学費も必ずしも高額な学校ばかりではないという。曉子さんも自分の経験を振り返り、「受験」ではあるが、学校に選ばれるというよりも、セミオーダーのように、自分たちに合った教育環境を、自分たちで選んでいくというプロセスだと気付き、その選択肢の豊富さに驚いた印象的な思いがあるという。それだけに、私立学校を選択肢に考える家族に対して、入り口で止めてしまわないで、 生きた情報をできるだけ多く提供できればという気持ちで、 今後の活動に意欲を燃やす。
 曉子さんによる私立学校セミナーの問い合わせはinfo@nylavie.comまで。
また、セミナー情報は facebook.com/NewYorkKoso
dateClub/で知ることもできる。(文=河原その子)

日本人にも人気の私立学校ダルトンスクール の校舎。

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