Dr.クララ・リー Dr.リーのデンタル日記 毎月第1火曜日掲載 Vol.56 ” First Things First ” まず最初にやるべきこと

 矯正について多くの患者は、インビザラインのことを尋ねてきます。インビザラインとは会社名です。矯正というと銀色の器具を使用したものが一般的ですが、インビザラインは透明なプラスチックのトレーを使用して矯正します。後者の矯正はほかにも何社かありますが、インビザラインが一番知名度が高く、多くの歯科医がこれを採用しています。
透明なプラスチックトレーを使用する矯正のシステムは、インビザラインなどの会社が歯科医から送られた患者の矯正前の歯型模型をコンピューターでスキャンし、それを元に矯正終了時までの患者のプラスチックトレーを作ります。患者はこのトレーを1つずつ装着し、1つのトレーに約1~2週間の時間をかけて矯正していきます。簡単なケースだと5つほどのトレーで終了しますが、難しいケースでは20~30、それ以上のトレーを要することもあります。
しかし歯科医の中には患者からこの矯正の依頼を受けると、最初にするべき治療をせずに矯正を始める歯科医もいます。先日、親知らずの治療のため新規の患者が来ました。彼女は5カ月前からほかの歯科でインビザラインの矯正を行っているといい、話を聞くとレントゲンはパノラマ(頭を軸にして撮る歯全体の写真)しか撮っていないとのこと。パノラマは歯の構造を見るには役立ちますが、虫歯の発見には精密度に欠けます。矯正を始める場合、最初の歯型模型を作る前に、虫歯治療や壊れかけたクラウンなどの歯冠修復物の治療を完了させなければなりません。矯正中に虫歯治療などを行うと歯の形が変わってしまうので、矯正用のトレーが適合しなくなってしまいます。加えて矯正中には、頻繁な歯のクリーニングを必要とします。
この患者は、当院で複数の治療を必要とすることが判明したので、このまま矯正を進めては以前の矯正トレーが合わなくなってしまいます。彼女がインビザラインを始める前に、前の歯科医が事前の処置を正しく行っていれば、彼女の矯正はスムーズに行えたでしょう。彼女は虫歯治療が必要となり、矯正もやり直しになるかもしれません。
インビザラインを安価で提供すると宣伝している歯科はたくさんあります。では、患者はどのように歯科医を選択したら良いのでしょうか? 安いというだけで飛び付いたり、宣伝だけを頼りにしては危険です。正しい治療には、時には高い治療費を支払わなければいけないこともあります。信頼できる歯科医を選びましょう! 「私は見栄えより中身、審美より歯の健康が一番!」とうたっています。


Waterside Dental Care

Dr. クララ・リーClara Lee, DDS

ニューヨーク大学歯学部卒業。ニューヨーク大学ブルックデール病院ではチーフレジデントを経験するなど、20年に及ぶ臨床経験は、一般歯科、コスメティック、インプラントを含む。インビザライン認定医。Waterside Dental Care医院長として古山医師とともに、多くの日本人患者を治療。Dentistryをこよなく愛している。
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