毎週第4金曜号掲載「My 養生・不養生」第1回 桑間雄一郎先生  ピンピン・コロリ三原則は 「太らない」「運動する」「タバコを吸わない」

第1回 My 養生・不養生 
「健康的な生活をしましょうね」と日頃から患者に説いている医療専門家。プライベートでも健康に気を遣っているかというと、どっこいそうでもなかったりして!? 先生がたの意外な素顔を直撃インタビュー。

桑間雄一郎先生
ピンピン・コロリ三原則は
「太らない」「運動する」
「タバコを吸わない」

「熱中症になると過呼吸になって、筋肉が痙攣するんです。手がこんな風に攣ってきました」とハーフマラソン直後の様子を語る桑間先生

「熱中症になると過呼吸になって、筋肉が痙攣するんです。手がこんな風に攣ってきました」とハーフマラソン直後の様子を語る桑間先生

桑間雄一郎
東京海上記念診療所院長。内科専門医師。マウントサイナイ医科大学内科准教授。東京大学医学部卒業後、腫瘍血管外科医師を経て1993年来米、ベス・イスラエル病院内科で内科研修修了。97年一度帰国、2000年から現職。東大医学部非常勤講師、日本医師会総合政策研究機構・主任研究員などを歴任。著書に、「極論で語る総合診療」(丸善出版)他。

東京海上記念診療所
Mount Sinai Beth Israel Japanese Medical Practice
55 E. 34th St., 2nd Fl. (bet. Park & Madison Aves.)
Tel: 212-889-2119

─桑間先生のモットーは「ピンピン・コロリ」。そのために心掛けていらっしゃることは何ですか?

 元気に生きて、死ぬときはコロッと。そのための三原則はズバリ「太らない」「運動する」「タバコを吸わない」。この3つを守ると、人生全体を見たときに、比較的健康な時間が長くなり、結果として寝たきりみたいな時間が少なくて済みます。だから僕もこの3つだけは心掛けています。
 普段からあんまり大食ではないので太らないし、タバコも吸わないので、2つは容易にクリア。運動もちゃんとやっています。来米当初からなるべく走るようにしていますが、今も1週間で10キロくらい走るかな。ついこの前も5キロマラソンに家族と一緒に出場しました。

─そういえば桑間先生は、マラソンの後で熱中症を経験されていますよね?

 そうそう。2002年だったかな。朝から摂氏30度を超す8月の熱い日、セントラルパークのハーフマラソンに出たときです。完走直後に過呼吸症になって筋肉が痙攣。手のひらもギュウウって攣(つ)りました。「あ、きたきた。これは熱中症だ〜。教科書にも書いてあったな〜」って感じで、もうろうとした頭で驚くほど冷静に状況判断をしていましたね。帰宅すると39度の熱が出ました。ゲータレードをたくさん飲んで寝たら、翌日には治りましたけどね。ここまで頑張ると「やりすぎ」だとの目安になりました。少しは練習もして出たハーフマラソンでしたが、猛暑という天候要素で運がなかった。

僕の弱点はストレスと食生活

─普段からあまり食べないのは、胃腸が弱かったり食べ物の好き嫌いがあったりするからですか?

 いや、取り立てて好き嫌いはありません。食に対して執着がないからでしょう。そういう意味で、僕の弱点は間違いなく食習慣ですね。自分でも分かっているんです。でもどうしようもない。例えば、診療中はコンピューターへの入力作業はあまりできないので、ランチタイムにそれをすると、食べている時間がなくなります。だからランチ抜きの毎日。ベンダーで買ったパンを2分でかじるとか。執筆その他、家でやる仕事もたくさんあって、それが終わるまで何も食べる気になれないので、結局夕食が夜遅くになってしまいます。胃に食べ物が入った状態で寝るのはすごく悪いんです。翌朝胃が痛いし、食べ物が逆流してくることもあります。
 ってな具合で、3年前に十二指腸潰瘍をやりました。ピロリ菌はないので、ストレス性。丁寧に診察すると時間がかかり、そうすると患者さんを待たせると思って焦る。毎日そのジレンマとストレスとの闘いです。仕事には充実感もある。でも決して健康的とは言えないのも事実です。どうしたらいいんでしょうね。人間みんなこうやって頑張って、いつの間にか死ぬのかなあ、なんて最近考えます。

─自分ではあまり食べないのに、料理はされるんですよね?

 そうなんです。医者の僕がこんなことを言って恐縮ですが、僕の料理は、健康のために栄養を考えて作るのではなくて、「食べて生き残るための料理」。来米当時、子どもが小さかったこともあって、成り行き上僕が一家の食事を作ることになったのが始まりです。朝5時に起きて、子どもの弁当も作っていましたよ。一家の食事用には、「カレー」「うなぎ丼」「みそ汁」「炊き込みご飯」「麻婆豆腐」とか、レパートリーを1品ずつカードに書いて、シャッフルして1週間のメニューを決めていました。
 当時の杵柄(きねづか)で、今もけっこう料理しています。僕はいつもボロのワイシャツを着ているので、帰宅してそのまま着替えずに台所に立ったりしますね。どうせ料理するなら楽しくと思って、ゲーム感覚でやります。短時間で何皿作れるか!って。鍋とヤカンの両方でお湯を沸かして時間を節約するとか、火が通りにくい材料から先に切るとか、常に調理器具を洗いながらスペース管理するとか。この方法で、先週は豚料理をまとめて作りました。ポークソテーと、大根と豚の甘しょっぱ煮と、麻婆豆腐。おかげで、味見しなくてもそこそこおいしい料理を作れるようになりました。次の課題は栄養バランスかな。

2002年8月、セントラルパークのハーフマラソンに出場。完走後、熱中症になるほど頑張った

2002年8月、セントラルパークのハーフマラソンに出場。完走後、熱中症になるほど頑張った

自宅のキッチンで料理に勤しむ桑間先生。この日は「カレー、焼きそば、そして豚キムチのために豚肉の下味付け(仕込み)をしました」

自宅のキッチンで料理に勤しむ桑間先生。この日は「カレー、焼きそば、そして豚キムチのために豚肉の下味付け(仕込み)をしました」