大竹彩子(焼酎&タパス 彩)焼酎とチーズのお話 毎月第4月曜号掲載 第七回

第七回:麦焼酎「いいちこ民陶くろびん」と南イタリアの「ブッラータ」
 焼酎を飲まない人でも一度は名前を聞いたことがあるであろう麦焼酎「いいちこ」。今年でちょうど創業60年を迎える三和酒類株式会社という大分県の大きな会社が造っています。

さて、「いいちこ」というと元祖下町のナポレオン「いいちこ」やNYでは白いボトルの「いいちこシルエット」が代表的ですが、実際には10を超えるシリーズがあります。その中でも筆者の一番のお気に入りが「いいちこ民陶くろびん」です。数あるいいちこシリーズの中でも一番口当たりやわらかですっきりとしています。質の高い原酒とのブレンディングと樽の中でじっくりと通常より長く熟成させることによって余分な臭みや角が取れ、これまでの焼酎と比べ格段に飲みやすく、原料である麦の甘さが爽やかに香ります。何かで割って飲むイメージが強いと思いますが、こちらはロックやストレートで滑らかに喉を伝って行きます。

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 今回合わせたいのが、南イタリアの高級チーズ「ブッラータ」。NYのほとんどのイタリアンレストランで見られるほどポピュラーです。見た目はモッツァレラチーズに似ているものの、そのお値段は数倍。こちらは表面を覆う部分はモッツァレラですが、中からは濃厚生クリームがとろけ出し、熟成期間の全くないスーパーフレッシュチーズなのです。通常、製造されてから24時間以内が食べどきで48時間経つと賞味期限切れ、と言われるほどその鮮度が命のブッラータは輸入が難しいため、「幻のフレッシュチーズ」と呼ばれ、その名の由来は「バターのような」という意味。中でも牛乳製でなく現地プーリア州の水牛の乳を使ったものが最高級品です。臭みは全くなく爽やかで、脂肪分は高いもののとてもさっぱり。とろけ出すクリームからかすかな酸味とほのかな甘さを堪能することができます。そのまま挽きたてのコショウを振ってシンプルに。カプレーゼのようにオリーブオイルとバジル、またフルーツともとても合います。ツウな食べ方は現地風に生牡蠣と。「いいちこ民陶くろびん」の麦の甘さが一段と引き立ち、お互いのやわらかさと爽やかさが完全に一致する抜群の相性です。ぜひ、特別な夜にこのぜいたくなマリアージュをお楽しみください。
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一口メモ
「いいちこ」を製造する蔵、三和酒類株式会社は県内に安心院(あじむ)葡萄酒工房というワイナリーも持ち、ワイン各種やブランデーも造っています。焼酎蔵の造る洋酒、一度は飲んでみたいです。

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大竹彩子
東京都出身。2006年、米国留学のため1年間ミネソタ州に滞在。07年にニューヨークに移り、焼酎バー八ちゃんに勤務。13年10月に自身の店「焼酎&タパス 彩」をオープン。焼酎利酒師の資格をもつ。

焼酎&タパス 彩
247 E 50th St (bet 2nd & 3rd Ave)
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