摩天楼クリニック「ただいま診察中」(連載42) カイロプラクティック治療 【10回シリーズ、その9】子どもとカイロプラクティック

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ジョンJ. ベルモンテ John J. Belmonte D.C., P.C.
コートランドニューヨーク州立大学レクリエーションセラピー学位取得後、身体障害者セラピーに従事。1991年ニューヨークカイロプラクティック大学卒業。インターナショナル・アカデミー・オブ・クリニカル・アーキュパンクチャー修了。PGA(全米プロゴルフ協会)の医療チームメンバー。1995年、カイロプラクティッククリニック「E53 Chiropractic & Wellness Studio」を開業。

Q子どもとカイロプラクティックの関係について教えてください。
A米国では昔、キンダーに入学した子どもたちに対して、正しい姿勢でまっすぐに座るように指導していました。学校で背骨(脊柱)のチェックが行われていた時代があったのです。残念ながら現在は、特に公立学校ではそのような指導はなくなっています。姿勢と学校教育の関連性や教師の役割分担など、考え方が変わってきたからでしょうか。しかし、カイロプラクティック医の立場から言うなら、子どもたちには早いうちから「まっすぐに座りなさい」と、きちんと教えるべきだと思っています。良い姿勢は健康状態を計るバロメーターであり、健康状態は学業における集中力にも影響します。
 子どもにカイロプラクティックを勧めるのは、姿勢のためだけではありません。体のゆがみは全身の健康状態に影響を及ぼします。子どもの骨格の問題に大人以上の注意を払うべきだと思う最大の理由は、子どもの体がまだ発達途上だからです。悪い姿勢や体のゆがみを誘発する習慣を放置したまま体が成長すると、後に脊柱に問題を抱える可能性があります。
Q子どもにカイロプラクティック治療とは、意外な印象を受けます。
Aカイロプラクティックに患者の年齢は関係ありません。赤ちゃんでも安全です。もちろん「ポキポキ」といった矯正はしませんが、触ったり撫でたり軽い振動といった負荷を掛け過ぎない手技で治療します。生後4カ月の新生児を診たこともありますよ。

Q新生児や乳幼児がカイロプラクティック治療を受けるきっかけとは?
A痛みの緩和のためというのは大人同様に多いのですが、親御さんがカイロプラクティックで施術を受け、その効用を知った場合が多いですね。私が診た4カ月の乳児は、出産時に産道で長くとどまってしまい、頭の形が少し変形したため、お母さんがその影響を心配して連れてきました。
 特別なアクシデントがなくても、赤ちゃんが狭い産道を通ることは肉体的に大きな負担です。医学的な問題を指摘されなくても、「問題ない」ということを確認するために来院する人もいます。小児科医での健康診断は主に内科的な健康状態を診ます。カイロプラクティック医は体の構造全体にフォーカスします。小児科同様に原始反射(幼児が特有の刺激に対して示す、中枢神経系によって引き起こされる反射行動)も検査します。

Q子どもを連れての来院動機としては、他にはどのようなものがありますか?
A代表的なものには、「姿勢が悪い」「背中が曲がっている」「痛みを訴える」「バレエや激しいスポーツで、○○を痛めた」「歩き方がおかしいと感じる」などがあります。特に背骨が曲がり、体が傾く脊柱側弯症(せきちゅうそくわんしょう)は代表的な症状です。

Q脊柱側弯症の原因は?
A原因の20%は骨の構造異常が挙げられますが、残りの80%は原因不明です。
兆候が出てくるのは8歳から10歳ごろですので、そのくらいの年齢から親が注意し、早期発見して対処することが重要です。自宅でできるチェック方法を紹介しましょう。

(1)背中を観察し触ってみたとき、背骨が曲がっていないか
(2)起立したとき、左右の肩と骨盤の高さは同じか
(3)前屈したとき、左右対称か
(4)起立したとき、横から見て左右の耳たぶ、肩、骨盤、膝、かかとが水平になっているか

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Qその他に子どもの成長に役立つカイロプラクティック治療はありますか?
A専門医にしか治療できない病気でも、その病気が体に及ぼす影響をケアするのにカイロプラクティックは役に立ちます。

Q例えばどのような病気ですか?
A私は、脳性麻痺、ぜん息、アレルギー、また乾癬(かんせん)のお子さんも診ます。カイロプラクティック医がそれらの病気を治すことはできませんが、例えば、足にブレースを着けて歩く子どもの体の成長の補助、ぜん息による息苦しさの軽減、痛みにより力んでいる筋肉を手技のマッサージでリラックスさせるなど、医療チームの一員としてケアをします。もちろん専門医のガイダンスに沿って行います。

Qカイロプラクティックは子どもの健康維持にとても有効なのですね。
A繰り返しますが、カイロプラクティックは体全体のバランスを診ます。特に発達途上の子どもの場合、けがなど痛みのある1カ所だけの治療に集中しているうちに他のところに影響が出て、それに気づかぬまま成長するのは避けたいものです。悪いところを見つけるためというよりは、「悪いところがない」と確認するためにも、年に1度、カイロプラクティック医のチェックアップを受けられれば理想的だと考えます。

 さてこの連載も残すところあと1回となりました。最終回は妊婦のためのカイロプラクティック治療について教えてください。

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