第11回 レオと田仲久子さん

 毎朝セントラルパークで愛犬レオを遊ばせるのが日課の田仲久子さん。レオのためにリタイアしてからは、彼の世話だけの毎日。おかげで健康な生活を送っているそうです。

田仲久子さん(元CADデザイナー、マンハッタン在住、ニューヨーク市在住38年)

田仲久子さん(元CADデザイナー、マンハッタン在住、ニューヨーク市在住38年)

——レオとの出会いは?
 私、レオの両親のマッチメーカーだったんです。ボーダーコリーの雄と雌を飼っている知り合い同士を紹介して、「子犬が生まれたら1匹ちょうだい」って冗談で言ってたんです。でも生まれたときに、「本当に欲しいの?」と聞かれて迷ってしまって、霊感の強い友人に相談したら「飼ってください」って言われて、その一言で決めたんです。

——レオとの生活、最初はどうでしたか?
 うちに来たときは2カ月でしたが、最初は後悔しました。犬を飼ったことがなかったので世話が大変で、その友人を恨みましたよ(笑)。当時はアパレルブランドでCADデザイナーをしていて、出勤前に1時間散歩に連れて行き、昼間はデイケアに預けて、帰宅するとまた散歩に連れて行くという毎日でした。
 ところが、2010年に私が脳梗塞を起こし、半身が動かなくなってしまったんです。3カ月のリハビリの間、レオは生まれたお宅に預けました。幸い仕事にも復帰できましたが、また体を壊してレオより先に死んじゃうのだけは避けたいと思い、1年後に思いきって仕事を辞めました。当時レオは6歳で、以来約6年間、私の生活はずっとレオの世話だけ、レオのためだけに生きています。

——毎日のスケジュールは?
 雨の日以外はほぼ毎朝、レオを犬用カートに乗せて、地下鉄でダウンタウンからセントラルパークに通っています。セントラルパークでは朝9時までリードなしで走り回れるので、夏は朝5時半から、冬は朝7ごろから遊ばせています。あとは夜、近所に散歩に行くだけで他は何もしないの。レオがいるから毎日1万5000歩ほど歩いてますが、1人じゃとてもそんなに歩けないわ。おかげで健康が維持できて、レオに感謝しています。

レオ(12歳の雄、ボーダーコリー)

レオ(12歳の雄、ボーダーコリー)

——これまでに印象的なエピソードはありますか?
 5年ほど前の夏ですが、私が眠っている間に、回っている扇風機に蚊取り線香がくっついて燃え上がっちゃったんです。当時7歳だったレオが、一度も私の顔を舐めたことなんてないのに、顔を舐めて起こしてくれて。ハッと目が覚めたら扇風機がばーっと燃え上がっていて! すぐさま服で叩いて火を消しました。レオが起こしてくれなかったら火事になっていました。「ご主人さまを起こさないと自分も焼け死ぬ」と思ったのかしら(笑)。

——田仲さんにとってレオはどんな存在ですか?
 大げさかもしれませんが、命の「恩犬」です。(レオは)普段はボケッーとしているのにね。私を火事から守ってくれたんですもの。本当に感謝しています。息子であり友達でもありますが、やっぱり命の恩犬ですね。

 
 

【 教えて!シンゴ先生 】

アニマルシェルター/動物病院のヒューメインソサエティー・オブ・ニューヨークで獣医師として活躍する添田晋吾先生にペットの健康について聞きました。

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添田晋吾
1995年山口大学農学部獣医学科卒業。2000年に来米し07年に米国獣医師免許を取得。ヒューメインソサエティー・オブ・ニューヨークに勤務する傍ら、東洋と西洋の医学を併用し、老犬のペインコントロールやQOLの向上を目的とした獣医療にも取り組む。
 
 
 

Q 犬の心臓病について教えてください。
A 今回は中・高齢の犬に起こる心臓病、特に僧帽弁閉鎖不全症についてお話しします。哺乳類の心臓は、左右の心房と心室、計4つの部屋で構成されています。肺からの酸素を多く含んだ血液をまず受け取るのが左心房で、その血液は左心房から左心室へと流れて全身に送られます。この左心室と左心房に間にあるのが僧帽弁で、血液の逆流を防ぎます。加齢に伴いこの弁の噛み合わせが悪くなり、逆流が発生します。
 獣医師はこの逆流音を聞き「心雑音」と表現します。心雑音は他の心臓の弁の疾患からも発生しますので、雑音の部位や症状、そしてレントゲンなどの検査を行い、最終的な診断がなされます。逆流のある心臓は、一定の血液量を全身に送るためより強く働き、筋肉の塊である心臓は大きくなり、心肥大となります。
 病気の初期には特に目立った症状は見られないのですが、進行すると咳や運動不耐性が見られます。この病態になると投薬による治療が必要になります。治療といっても完全に治るわけではなく、「薬で症状を改善しそれを維持する」と理解してください。場合によってはレントゲン、エコー、心電図や血圧の検査を行い、その病態に合わせた薬を処方します。投薬は一生続けなければなりません。
 肥満や塩分の多い食事は心臓に負担が掛かりますので、普段から気を付けてください。有効な予防法がありませんので、早期発見で病態の把握に努めましょう。そのためにも、定期的に獣医師の検診を受けることを勧めます。