第12回 ジェリーと萩原さとりさん

 6年前、シェルターから引き取ったばかりの愛猫シャコを病気で亡くした萩原さん一家。ショックと悲しみのあまり「もう動物は飼わない」と決めていた家族にジェリーを引き合わせてくれたのは、友人の青木恵子さん(本紙3月9日号で紹介)でした。

萩原さとりさん(シェフ)。クイーンズ区在住、ニューヨーク在住10年

萩原さとりさん(シェフ)。クイーンズ区在住、ニューヨーク在住10年

——シャコちゃん、何の病気だったんですか?
 肺に穴が開く病気で、引き取ったとき既に小さな穴があったようです。成長するにつれて大きくなったのでしょう。呼吸をするときにお腹が上下して、少し息苦しそうなのでヒューメインソサエティーの添田晋吾先生に診ていただいたら、すぐ救急病院に連れて行きなさいと言われて。救急病院でも治る見込みがないので、安楽死を勧められました。大泣きして、主人(シェフの萩原好司さん)も仕事を早く終わらせて駆け付けて臨終に立ち会ってくれました。
 救急病院に連れて行く前、最後にご飯をあげたとき、体をすり寄せてきて、普段とは違う雰囲気だったんです。後から振り返ると、「これまでありがとう」って言いたかったのかなって。主人にとっては初めて飼う猫。夜遅くまで帰りをずっと待っていてくれて、ビール飲むときも一緒、酔ってうたた寝するときも一緒。だから2人ともショックで。

—そこに青木さんがジェリーを紹介してくれたのですね。
 シャコも恵子さんが車を止めていた駐車場にいた野良猫でした。「死に目に遭うのはつらすぎる。もう飼いたくない」と落ち込んでいたら、恵子さんが「なに言ってんの!」って。自らヒューメインソサエティーに出向き、里親募集中の猫の写真を送ってきてくれたんです。一緒に見に行った息子の朝陽(あさひ)がわんぱくで人懐こいジェリーに一目惚れして、決めました。

朝陽さん(12)とジェリー(6歳、雌、ドメスティック・ショート・ヘア)は相思相愛の仲。見つめ合う2人…

朝陽さん(12)とジェリー(6歳、雌、ドメスティック・ショート・ヘア)は相思相愛の仲。見つめ合う2人…

—ジェリーはどんな猫ですか?
 食いしん坊で息子ラブ。動物はご飯をもらう人(さとりさん)に一番なつくものなのに、家族の中で息子のことが一番好き。息子にかまってもらいたくて、いつもべったりと密着しています。教科書を床に広げて勉強していると、その上に乗ってじゃまをする。息子はバレエを習っているのですが、部屋でストレッチをしていると、その周りをうろうろして「がんばれー!がんばれー!」って。好物はシェルステーキ。引き取ったころはやせっぽちだったのに、こんなに貫禄がついちゃって。

—さとりさんや荻原シェフにとってジェリーはどんな存在ですか?
 鼻の辺りが「加トちゃんぺッ」みたいでしょ。顔を見ていると嫌なことも忘れちゃう。主人は毎晩帰宅が遅くて、息子と私は先に寝てしまうのに、玄関で待っていてくれる。お風呂から上がるのも待っていてくれて、その後の晩酌にも付き合ってくれる。主人いわく、「今日も1日お疲れさま〜」と言ってくれる、小料理屋のママ? みたいな存在だそうです(笑)。

 
 

【 教えて!シンゴ先生 】

アニマルシェルター/動物病院のヒューメインソサエティー・オブ・ニューヨークで獣医師として活躍する添田晋吾先生にペットの健康について聞きました。

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添田晋吾
1995年山口大学農学部獣医学科卒業。2000年に来米し07年に米国獣医師免許を取得。ヒューメインソサエティー・オブ・ニューヨークに勤務する傍ら、東洋と西洋の医学を併用し、老犬のペインコントロールやQOLの向上を目的とした獣医療にも取り組む。
 
 
 

Q 家庭でできる健康チェックの仕方を教えてください。
A やり方は簡単で、主に「見る」「触る」です。抜け毛や目やに、歩き方、便の形状などは見てすぐに変化が分かる例です。その変化が一時的なのか、または継続的なのかで動物病院に連れて行くかどうかの判断材料になります。また、その変化を獣医師に伝えれば、診察に役立つでしょう。
 毎日、意識的に触ることで体表にできた腫瘍や皮膚病を早いうちに発見できるかもしれません。毎日触っていないと、腫瘍が大きくなるまで気付かず、いつごろからあったのかも分かりません。触ると嫌がる箇所があった場合、それが正常なのか異常なのか、これも日頃から触っていないと分からないことです。
 肥満も肋骨付近の脂肪の付き方でチェックできます。肋骨が皮膚の上から感じられないようであれば、肥満傾向にあるかもしれません。ネコの場合、下腹部にお肉がタプタプと垂れ下がっているようであれば要注意です。もちろん定期的に体重を計って管理することも、肥満防止に役立ちます。
 臭いもまた、健康を測る基準になります。口臭、耳の臭い、便や尿の臭いの変化などは病気の兆候の可能性があります。
 ペットの高齢化に伴い、歯周病や歯槽膿漏は珍しい病気ではなくなってきました。これも早期に発見し対処することが重要ですね。
 さあ、今日からペットを触って、見て、何が常態なのかを確認しましょう。ペットを触ることによって幸せホルモンであるオキシトシンが分泌されることも分かっています。健康チェックをしながら、「ペットとハッピーライフ」を。