がんセンター医務部長が辞任 数百万ドルの資金提供を非開示

 【13日付ニューヨークタイムズ】がん研究と治療の実績において米国有数とされる、マンハッタン区のニューヨーク・メモリアル・スローン・ケタリングがんセンターの医務部長、ジョセ・バセルガ医師(59)が13日、辞任した。製薬会社から合計で数百万ドルに及ぶ資金提供を受けていたことを研究論文の中で開示していなかったことが、ニューヨークタイムズとプロパブリカの報道により発覚していた。
 バセルガ医師は2013年以降、ニューイングランドジャーナルやランセットなどの医学情報誌に発表した約180本の研究論文の約6割で、スイスの製薬会社ロシュや複数の小規模なバイオテクノロジー新興企業との金銭的つながりを非開示。昨年、共同執筆した論文のうち87%でも開示を怠っていた。
 同医師は、このうち17本の論文では利益相反に当たる開示を改訂する計画があったというが、金銭的影響が少ないテーマの数十本の論文では改訂の必要はないと主張。また非開示は意図的なものではなく、研究の価値に反映するべきではないと述べていた。
 企業から医師への資金提供を巡っては、複数の著名な医師が開示を怠っていたことが約10年前に問題となり、医学雑誌や職能団体は報告に厳格な規定を定めている。2013年、オバマ政権下では企業から医師への10ドル以上の資金提供開示を義務付けるサンシャイン条項が施行されている。

バセルガ医師。スローンケタリングの公式ホームページより

バセルガ医師。スローンケタリングの公式ホームページより