飯島真由美 弁護士 Legal Cafe Vol.40 米国に残した遺産の相続について

 あけましておめでとうございます。
 今回は最近問い合わせが多い、非居住者である日本人が米国(ニューヨーク州)に残した遺産の相続手続きについて説明します。今回は遺言書のない場合を想定しています。

裁判所手続き
 ニューヨーク州では、銀行など金融機関に残された遺産や不動産の相続手続は必ず遺言検認裁判所(Surrogateʼs Court)を通すことになります。しかし、遺産に受取人(Beneficiary)が設定されている場合は除きます。その場合の手続きは、該当する金融機関にお問い合わせください。また非居住者の場合の裁判所の管轄は、不動産の場合はその地区、また金融機関の場合は一般的に口座のある支店の地区が管轄となります。なおニューヨーク市内には各地区に1つずつ裁判所がありますので、該当地区の裁判所で手続きをすることになります。

管財人になれるのは誰か
 相続手続きはまず、遺産管財人を選び裁判所に申し立て書(Petition)を提出することから始まります。管財人の仕事は、遺産の解約や相続人への分配の他、負債の支払いや税金申告(*)なども含みます。管財人には、配偶者や子どもなどの遺族がなるのが一般的ですが、外国人(市民権非保持者)の場合は、単独では遺産管財人になれません。その場合、法的相続人の同意があれば、血縁のない米国在住者を管財人として選ぶことができ、また外国人の遺族が米国在住者と共同で管財人になることも可能です。

遺産分配とその法律
 申立書が承認されれば、管財人宛てに「Letters Testamentary」という書類が発行され、管財人はその書類を使って遺産整理に着手し、遺産を分配できるようになります。なお、故人が日本人で米国非居住者の場合、不動産以外の遺産については日本の法律に従って遺産が分配されます。

3万ドル以下の小口財産(Small Estate)
 遺産額が3万ドル以下であれば簡易手続きが適用され、遺族であれば外国人でも管財人になれる可能性があります。しかし来米できない場合、(その遺族が)管財人となるのは困難でしょう。
*相続税の手続きは日本と米国とでは異なりますので、専門家にご相談ください。また管財人手続きについては、各地区の遺言検認裁判所にお問い合わせください。

今月のお店
Debutea
217 Thompson St. (bet. W. 3rd & Bleecker Sts.)
www.facebook.com/pages/Debutea/173100546666409
チーズティーやフルーツをふんだんに使った独自のドリンクメニューが人気の台湾風カフェ。ニューヨーク大学の近くにあります。


飯島真由美 弁護士事務所
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NY州認定弁護士。法政大学文学部、NY市立大学ロースクール卒業。みずほ銀行コンプライアンス部門を経て独立。2010年に飯島真由美弁護士事務所を設立。家庭法、訴訟法、移民法など幅広い分野で活躍中。趣味はカフェ巡り。