アブダビがクライスラービル売却 1億5千万ドルの破格値で合意

 米不動産会社大手RFRホールディングなどが、マンハッタン区ミッドタウンのクライスラービルを約1億5000万ドル(約170億円)で取得することで合意したと、ウォール・ストリート・ジャーナルが8日報じた。関係者の話としている。
 報道によると売却先はRFRホールディングおよびオーストラリアの不動産投資会社大手シグナ・ホールディング・GmbH。アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ首長国は、政府系ファンド(SWF)のアブダビ投資評議会(ADIC)を通じて2008年、約8億ドル(約8896億円)で同ビルの9割を購入していたため、売却額は購入額を大幅に下回ることになる。
 同紙によると、値を下げての売却は、クーパー・ユニオン・スクールから借りている同ビルが建つ土地の年間賃貸料が昨年、775万ドル(約8億6180万円)から3250万ドル(約36億円)に値上がりし、2028年には4100万ドル(約45億6000万円)に上昇することが理由の1つ。同紙はまた、同ビルの約40万平方フィート(約3万7160平方メートル)が現在、空室または今後、空室となる見込みで、新たなテナントを引きつけるには、約2億ドル(約222億円)をかけた大規模な改装が必要になることにも触れている。
 ニューヨークの象徴の1つとたたえられる77階建てアールデコ様式の同ビルは、当時の自動車大手クライスラーが1930年に建設。翌年にエンパイア・ステート・ビルが完成するまで、世界一の高さを誇っていた。

クライスラービル=1月
(photo: 本紙)