第18回 リオンと大澤佳南さん

 夫の俊介さんと一緒に1年半前にニューヨークにやって来た大澤佳南さんとリオン。エンパイアステートビルを一望できるアパートで優雅に暮らすリオンですが、佳南さんが9年前に東京のペットショップで見つけたときは、栄養失調で悲惨な状態だったそうです。

(右から)大澤佳南さん(主婦、マンハッタン区在住)、リオン(アビシニアン、9歳の男の子)、俊介さん(会社員)

—リオンはどんな状態だったのですか?
 ガリガリに痩せていました。ペットショップでは、大きくなった犬や猫は売れないそうで、成長させないために、あまり食べさせてもらってなかったようです。抱き上げたとき、ウンチの匂いもしました。ケージも不潔で、「ここにいたら死んじゃう」と、すぐに引き取ることを決めました。生後90日ぐらいだったと思います。

—東京のペットショップでリオンをレスキューした佳南さん、米国に来てペットをめぐる環境の違いを感じますか?
 こちらは、動物を売るのではなく、アダプション(里親)募集のために犬や猫を置いているお店がほとんどですよね。その点が日本とは大きく違うと思います。猫たちもふっくらしていて毛艶もいいし。それにペットフードや猫砂の種類が豊富なことにも驚かされました。高品質のペットフードが(日本と比べて)安価で手に入るのもうれしいです。

—独身時代の佳南さんを独占していたリオン、俊介さんとはすぐに慣れましたか?
 主人は、猫を飼ったことのない「猫初心者」だったのですが、リオンに会って開口一番「おしゃれな猫だね〜」と言ってくれたんです。最初からとても可愛がってくれて、お風呂にも率先して入れてくれました。今から考えると、リオンに優しくしてくれたことをきっかけに、主人に惹かれていったように思います。

「リオン」の由来は、佳南さんが大好きなナタリー・ポートマン主演の映画「レオン」から

—リオンはどんな子ですか?
 すごくやんちゃ。甘噛みしたり、主人を待ち構えていて猫パンチしたりと愛情表現はとってもワイルド。実家で飼っていた3匹の猫はどの子もどっしりしていておとなしかったので、すごく新鮮に感じました。調べてみると、アビシニアンって、超活発な猫なんです。離乳期にまともに食べさせてもらえなかったせいか、食べ物に対する好奇心も旺盛です。食事中、私たちが何を食べているかチェックしにテーブルに乗ってくるので困っちゃう(苦笑)。食べることが大好きなのにお腹が弱くて油断するとすぐ下しちゃう。これも離乳期に正しく育てられていなかったからだと思います。

—佳南さんと俊介さんにとってリオンはどんな存在ですか?
 かけがえのない家族です。やんちゃで怖がりですが、甘えたいときは頭突きをしながらスリスリしてきます。私たちが帰宅すると必ず出迎えてくれ、ずっと後をついてきます。お風呂やトイレにも必ずついてきて、待ってくれています。
 私とリオンの2人だけのときはいつも私が見える場所にいますし、主人と私とリオンの家族3人はいつも同じ空間にいますね。実はとっても甘えんぼうなのに甘え下手なところも可愛い。尻尾を震わせながら甘える姿は主人と私にしか見せないので、主人はそれがたまらなく愛おしいようです。

 
 

【 教えて!シンゴ先生 】

アニマルシェルター/動物病院のヒューメインソサエティー・オブ・ニューヨークで獣医師として活躍する添田晋吾先生にペットの健康について聞きました。

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添田晋吾
1995年山口大学農学部獣医学科卒業。2000年に来米し07年に米国獣医師免許を取得。ヒューメインソサエティー・オブ・ニューヨークに勤務する傍ら、東洋と西洋の医学を併用し、老犬のペインコントロールやQOLの向上を目的とした獣医療にも取り組む。
 
 
 

Qペットの避妊(去勢)手術のメリット、デメリットは? また、手術はいつ行うのが適切ですか?

 A  この手術の最大の目的は「不要な子猫や子犬をこれ以上増やさない」ということです。最近はアダプション(里親への譲渡)が盛んになってきましたが、引き取り手がいない犬や猫が毎年、大量に殺処分となっている現状を考えると、避妊手術は必要です。
 メリットは、生殖器関連の病気を防げること、性ホルモンに起因する問題行動がなくなることです。デメリットは、体重の増加です。しかしこの問題は食餌を手術前より約20%減らす、犬なら運動量(散歩の時間など)、猫なら遊んであげる時間を増やすことにより十分コントロールできます。
去勢手術をすることで雄犬は前立腺炎をはじめ、会陰ヘルニア、肛門周囲腺腫などに罹患する可能性を低くします。また、一般的に攻撃性が抑制される傾向にあります。雌犬は乳腺腫瘍、子宮蓄膿症、卵巣や子宮の腫瘍などの予防になるといわれています。雄猫ではマーキングや、他の猫とのけんかを予防できます。他の猫との接触がなければ、伝染病に感染する確率も減ります。雌猫では、性行為感染症や子宮や卵巣の病気、乳腺腫瘍の発症の可能性が低下します。
 次に手術のタイミングですが、早い時期に手術をした中・大型犬に関節や靭帯の成長に障害が出るとの報告があり、推奨時期が近年見直されています。生後半年以降、1歳未満が適切でしょう。