弁護士スティーブン・エプステインの知ってて安心! 法律指南 Vol. 50 ◆障害者の雇用

 米国労働省は、従業員が効率よく仕事ができるよう、適切なツールと労働環境が必要だと勧告しています。雇用主は障害者のために、職場の調整を図り、設備などを整え、生産性を最大化できるよう便宜を図る必要があると述べています。
 米国障害者法(ADA)は、障害のある従業員や求職者のために「合理的配慮」を定め、雇用におけるすべての面において障害者に対する差別を禁止しています。この法律は、15人以上の従業員を擁する雇用主に適用されます。
 障害の定義は幅広くなってきています。日常生活において1つあるいは複数以上、著しく身体的または精神的に制限がある、またはこうした障害があった経歴がある場合、障害とみなします。
 ADAは雇用において障害者に対する「合理的配慮」を定めています。「合理的配慮」とは、障害者のために職場を調整し労働環境が整えられ、平等な雇用機会が与えられることです。
 具体的には、①採用プロセスでの配慮、②職務に伴う本質的な機能を遂行させるための配慮、③均等な利益および特典の享受に関する配慮です。

障害者差別と雇用主の責任

 障害者であるがために雇用において健常者と異なる待遇を受けることを「障害者差別」といいます。精神や身体の障害を理由にした嫌がらせなどです。障害のある人が好ましくない不快な労働環境で働かされる、または解雇、降職などの不利な雇用の決定を受けた場合、ハラスメントとみなされ違法行為となります。加害者には、被害者の監督者や他の勤務先での監督者、同僚、または顧客や取引先など、雇用主以外も含まれます。
 米国の連邦最高裁判所は、監督者などによる違法なハラスメントの責任が雇用主にあることを明確にしました。これは、雇用主が監督者の行動に責任があること、雇用主がハラスメントによる被害を最小限にし、回避させるよう監督者や従業員に奨励すべきであるとの原則に基づいています。加えて、差別やハラスメントを訴える従業員に報復することを禁じています。
 障害を理由に差別やハラスメントを受けたと思う人は、速やかに弁護士に相談してください。

Steven W. Epstein スティーブン・エプステイン弁護士
ブランディーズ大学、ニューヨーク・ロースクール卒。18歳から法律事務所で働き始め、2003年まで弁護士組合員として幅広い分野の訴訟を担当。04年に独立し、「Steven W. Epstein & Assosiates法律事務所」を設立した。取扱い業務は、民事訴訟、会社法(設立、契約)、家庭法(離婚)、刑事訴訟など、多岐に渡る。また、NY市行政裁判所にて非常勤審判官も務めている。

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