連載325 山田順の「週刊:未来地図」新型コロナウイルス感染収束後の        世界はどうなっているのか?(中)

「長期戦」選択の日本のダメージは大きすぎる

 このように見てくると、今回のコロナ問題でもっともダメージを受けるのは日本ではないかと思う。それは、アメリカやヨーロッパが戦争で言えば「短期決戦」を選択しているのに、日本は「長期戦」を選択しているからだ。
 しかも、東京五輪は「中止・延期」が決定的だから、それによる経済損出が重なる。東京五輪の経済効果は32兆円とされてきたが、これは準備期間5年間の総合だ。よって中止・延期による直接的損出は20兆円と見積られている。これが消えてなくなれば、そのロスは計り知れない。
 さらに、これまで積み上げてきたインバウンド効果がほぼゼロになるのだから、コロナ大恐慌に陥るのは確実だ。
 また、東京五輪よって直接雇用される人数は全国で30万人増加し、1.3兆円が雇用者所得になると試算されてきたが、これも吹っ飛ぶ。この雇用効果は五輪後も続き、五輪のレガシー効果として全国で163万人の雇用が生まれ、7.3兆円の雇用者所得が生まれるとされてきた。しかし、生まれるのは雇用増ではなく失業者の群れだ。

日本はより強固な「社会主義国家」になる

 日本銀行は16日、金融政策決定会合を開き、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う金融市場や経済の動揺をおさえるための緊急措置を決めた。
 現在、年6兆円としている上場投資信託(ETF)の購入目標額を12兆円に倍増したほか、大企業が発行するコマーシャルペーパー(CP)・社債の購入や中小企業の資金繰り支援のための金融機関向けの資金供給も拡充すると発表した。
 マイナス金利まで導入して市場に資金を出してきた日銀としてはこれが精一杯の対策である。しかし、この対策によって日本経済はさらに活力を失う。一時的には効いても、長期的には沈むのは避けられない。
 というのは、いまや日銀はこれまでのETF購入などで日本の名だたる企業の筆頭株主になっているからだ。ユニクロのファーストリティニング、TDK、京セラ、コナミなど、企業名を挙げていけばきりがない。
 細かい説明は省くが、今回の日銀の対策でこうした企業の「国有化」はさらに進む。これは資本主義国家ではない。中国よりひどい社会主義国家である。
 今後、日本から自由市場がなくなり、日本はいまよりひどい統制経済国家になるだろう。
 コロナショックが起こり、急遽ささやかれているのがドイツ銀行のデフォルトである。ドイツ銀行の社債(CoCo債:破綻しても返済義務のない社債)はコロナショック前から投げ売りになっている。ドイツ政府は、どうやらドイツ銀行を救わないようである。このドイツ銀行の社債やCDSは、日本の公的資金(厚生年金基金)や農林中金などの金融機関が大量に買っている。
 また、ドイツ銀行の筆頭株主は、世界最大のファンド企業のブラックロックである。コロナショックは、リーマンショクを超えるのは確実だ。

中国型管理社会、強権IT社会が訪れるのか?

 中国は今回の新型コロナウイルスの感染拡大を封じ込めたことになっている。北京はすでに経済活動の再開を宣言し、あろうことか新型コロナウイルスの発生源を「中国以外の可能性がある」とまで言い出した。
 もし、世界に先駆けて経済が回復すれば、中国政府が取った「封じ込め政策」は正しかったことになる。ではこの封じ込め政策を可能にしたのはなんだろうか?
 それはITによる監視システムである。また、強力な中央集権を持つ一党独裁国家というシステムだ。
 現在、アメリカもヨーロッパも中国の後を追ってITを駆使した封じ込め政策を取っている。まったく取っていないのは、先進諸国のなかでは日本だけだろう。
 となると、コロナ収束後の世界では世界の中国化が進む可能性がある。自由、平等、人権よりも命と安全のほうが優先されるのは当然だからだ。右翼、保守勢力が力を伸ばし、排外主義が進む可能性がある。
 ただ、アメリカもヨーロッパもこの方向に舵を切るとは思えない。そんなことをしたら、民主主義まで破壊されてしまう。ただし、人々の生活のIT依存はよりいっそう進むだろう。経済においてはデジタルエコノミーがさらに加速する。 

(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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