連載343 山田順の「週刊:未来地図」止まらない「コロナ禍」への数々の疑問。 これまでの情報を整理する(第三部・中)

(17)世界経済は「大恐慌」に向かうのか?
 IMFは4月14日、新型コロナウイルスの感染拡大で世界が今年、歴史的な不況に陥るものの、2021年には大きく持ち直し「V字回復」を遂げるという、見通しを発表した。
 この見通し発表前の9日、IMFのゲオルギエワ専務理事は、2020年の世界経済成長率は「大幅なマイナス」となり、1930年代の「大恐慌」(Great Depression)以来の大不況になるとの見方を示している。
 要するに、今年は 大恐慌だが、2021年はV字回復すると、IMFは言っているのだ。
 しかし、この見通しはあまりに甘いと言わざるをえない。なぜなら、今年の後半に、コロナ禍が終息(収束ではなく終息)しなければ、V字回復などあるわけがないからだ。
 そこで、今年に絞って、IMFの見通しを見ると、世界経済は2.9%のプラス成長だった2019年から大幅に悪化して、マイナスに落ち込むことになっている。その程度をマイナス3%とすれば、世界のGDPが2.7兆ドル吹き飛ぶことになる。
 次が、IMFの地域別GDP予測だ。 
 アメリカ マイナス5.9%
 ユーロ圏 マイナス7.5%
 日本 マイナス5.2%
 中国 プラス1.2%
 アメリカ、ヨーロッパに比べ、なぜ、日本のマイナスが抑えられているか、まったくわからない。この財政状況が最悪で、消費税増税の落ち込みがあり、さらにコロナ対策の失敗から内需がガタガタになると予測されている国が、マイナス5.2%とは信じがたい。少なくともマイナス10%、悪くすればマイナス20%まであるだろう。いままさに恐慌が到来しようとしているのは、間違いないからだ。

 中国のプラス1.2%も信じがたい。統計をとってから初めてのマイナスになるのではないだろうか。アメリカもはたして、マイナス5.9%で済むだろうか。

(18)アメリカ経済は今後どこまで落ちるのか?
 世界のGDPは約80兆ドルである。そのうちアメリカが約21兆ドルで、4分の1を占めている(ちなみに日本は約5兆ドル、中国は13兆ドル)。
 よって、アメリカ経済がどうなるかで、世界経済の行方も、日本経済の行方も決まる。前記したIMFの見通しであるマイナス5.9%ならマシなほうで、さらに悪化すると、世界は間違いなく大恐慌になるだろう。
 NYダウは、ここにきて落ち着き、2万3000ドル台で踊り場を迎えているが、いずれ2万ドルを割ってしまうだろう。日本株も1万2000円まで落ち込むと思われる。
 新型コロナウイルスは、アメリカの格差社会を底辺から支えるワーキングクラスを直撃した。すでに、3月の1カ月間で失業率はうなぎ上りになり、先週は660万人以上の労働者が失業保険申請をした。この状況は、9.11同時多発テロ、リーマンショックよりはるかに悪い。
 アメリカ経済の7割を占めるサービス業で、廃業、倒産、レイオフ(解雇)が相次いでいる。ロックダウンは経済的な大虐殺と同じで、サービス業から全業種に広がり、事業存続の危機をもたらしている。需要も大幅に落ち込み、コロナウイルス感染が拡大するにつれ、自動車はまったく売れなくなり、販売数は前年比でほぼ半減してしまった。
 富が富裕層に集中してしまったアメリカ経済は、じつは非常に脆い面を持っている。Yahooファイナンスの記事によると、今年、「GOBankingRates」が5000人以上の成人に「あなたは、預貯金口座にどれだけ蓄えがありますか?」と質問調査したところ、回答者の58%が1000ドル以下しか貯金がなかった。アメリカ人はほとんど貯金を持っていないのだ。これでは、危機に持ちこたえられない。
 また、CNBCの報道によると、ニューヨーク連邦準備銀行は、アメリカの世帯債務が2019年に急上昇し、リーマンショック以来最大の年間増加を記録したと公表したという。アメリカ人のほとんどがクレジットの債務を抱えて暮らしている。新型コロナウイルスは、こうしたアメリカの世帯を直撃してしまったのである。
 このようなことを考えれば、アメリカ経済が1年で回復に向かうとはとても思えない。GDPの落ち込みもマイナス5.9%では済まないだろう。
(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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