Vol.65 俳優 本田真穂さん

俳優 本田真穂さん

「日本や海外に住む方々が、少しでも共感したり、考えたりしながらご覧になってくださったら嬉しいです」

 ニューヨーク在住の日本人クリエイターチーム、デルックが製作したインディーズドラマ「報道バズ」。アマゾンプライムなどで配信を開始したところ「見ると前向きな気持ちになれる」と口コミで話題沸騰中だ。

 このドラマは民放アナウンサーだった主人公の和田明日佳が、勤めていたテレビ局を辞めてニューヨーク市ブルックリン区に渡り、ニュースアプリ会社「報道バズ」に転職。有名な母をもつテレビマン、英語を話せない「残念ハーフ」、日英バイリンガルのハーフの新人記者など、さまざまなアイデンティティを持った登場人物が誹謗中傷やステマ、女性軽視など社会問題と向き合い「メディアの嘘」を追うというストーリーだ。プロデューサー兼主演を務めた本田真穂さんにインタビューした(深川友里加/本紙)

左から本田真穂さん、川出 真理さん、近藤 司さん
本田真穂
早稲田大学卒。東京と北京での芸能活動を経て、現在はニューヨークを拠点に活動する俳優。全米映画俳優組合、米国テレビ・ラジオ芸能人組合 (SAG-AFTRA)、全米舞台俳優協会(AEA)加盟。出演作に、『Maniac(Netflix)』、『Time’s Journey Through a Room(The Play Company)』(Off-Broadway, NYT Critic’s Pick) 等。

いつから制作を開始しましたか?

この作品を作ろうと考えたきっかけを教えてください。

 2014年の2月から構想を練り始めました。同じチームで製作したユーチューブのウェブドラマ「二アベ(2ndアベニュー)」を見てくださったエグゼクティブプロデューサーが参加してくださったことで報道バズの話が動き出し、脚本担当の近藤が当時人気だったHBOのドラマ「ニュースルーム」にインスピレーションを受けて内容を作り始めました。

ドラマの中では、「セクハラ」「女性軽視」「マイノリティ」「偏った報道」「ステマ」など、メディアの問題を含む社会問題をたくさん取り上げられていました。実際にニューヨークで2013年に起きた「ニューヨーク市警察の日本人留学生ひき逃げ事件」も題材にされていましたね。こうした社会問題を取り上げた理由を教えてください。

 大手制作会社が制作するテレビドラマではないことを逆手にとって、インディーズだからこそ可能なテーマを取り入れようという狙いがありました。

 実際に起きた事件や実在する会社名を使うなど、従来の日本のフィクションとリアリティの壁に挑戦することで、ドラマ視聴者の方々により「自分ごと」としてご覧いただけたら良いなと期待しています。

作品の舞台は「ニューヨークにある日本人向けのニュースアプリ会社」でしたが、さまざまなアイデンティティを持つ登場人物や社内の雰囲気など、実際にニューヨークをはじめ海外にある日系の会社をリアルに再現されていると思い、驚きました。

 そうおっしゃってくださり、とても嬉しいです。参加してくれることになった俳優さんそれぞれの個性に合わせて脚本やセリフを変更するなど、自然な雰囲気やリアリティを出すべく工夫しました。オフィスの内装は美術監督の森下瑤子さんが素敵に作り上げてくれました。

主人公の和田明日佳さんが日本からニューヨークに渡り新しい生活を始めるシーンは、実際に日本から海外に渡った経験のある人なら、誰もが共感するシーンだと思いました。

意識した点、工夫した点はございますか?

 和田明日佳が1人ぼっちでニューヨークに到着するシーンや、日本とニューヨークとのギャップに驚くシーンは、私たち3人(本田さん、プロデューサーの川出 真理さん、近藤 司さん)とも10年以上前に渡米した時の新鮮な気持ちを必死で思い出しながら作りました。

 

制作過程で印象に残っていること、苦労した点があれば教えてください。

 低予算のインディーズ作品なので、苦労した点はたくさんあるのですが…。

 強いて1つ挙げるとしたら、第1話のタイムズスクエアで撮影したシーンは、本当の冷たい嵐が吹きすさぶ中で撮ったので、とても大変でした。途中何度もロケバスの中や近くのカフェで暖をとりましたし、あまりにも寒かったので、俳優用のヒートテックを途中でスタッフの一人に買いに行ってもらいました。風邪をひく人が1人も出なかったのは奇跡だと思います。

 制作の過程では、インディーズであり、映画ではなくドラマである、という異例な作品ということで、日本での配給先が決まるまでが山あり谷ありの長い長い道のりでした。

作品を通して視聴者に1番伝えたいことを教えてください。

 日本で育った私たち3人が、ニューヨークで生きる上で体験してきたことがいろいろなテーマとなって詰め込まれた作品なので、日本や海外に住む視聴者の方々が、そのうちのどれか1つだけでも共感したり、疑問に思ったり、考えたりしながらご覧になってくださったら嬉しいです。また、主人公の和田や柴田のように、何か新しいことを始めようとしている誰かの背中を押してくれる作品になればいいなと思っています。

「報道バズ」Amazon プライムビデオ、YouTube、ひかり TV、Rakuten TVの他、合計11のプラットフォームで配信中。ウェブサイトはこちら。

https://www.derrrrruq.com/hodobuzz