連載645 山田順の「週刊:未来地図」 中国の「第二文革」による経済失速が日本を直撃。 インフレ大転換で生活崩壊! (中2)

連載645 山田順の「週刊:未来地図」 中国の「第二文革」による経済失速が日本を直撃。
インフレ大転換で生活崩壊! (中2)

 

中国への投資は危険、リスクが大きすぎる

 それでは、このような中国の変化が、わが国を含めて世界にどんな影響を与えるのか、考えてみたい。すでに、その兆候は出ている。これまで、中国に投資してきた投資家たちの資金の引き上げだ。

 北京のアリババやテンセントに対する規制強化を見て、アメリカでは多くの投資家が、「これ以上中国に投資するのは危険だ」と言い始めた。トランプ前政権、バイデン現政権と「中国デカップリング」が続いてきたことを思うと遅すぎるとも言えるが、この動きが本格化したのは、6月末から7月初めのことだ。

 このとき、ニューヨーク証券取引所は、滴滴出行(ディディ)の上場に湧いていた。中国国内を中心に年間ユーザー数が5億人に迫ると喧伝され、上場後の時価総額は一気に約670億ドル(約7兆3700億円)を付けた。

 ところが、上場からわずか2日後の7月2日、中国政府は突如として、「国家安全上の理由」で滴滴を審査すると発表し、新規ユーザーの登録を停止させた。そして、その2日後、今度は滴滴が違法に個人情報を収集していたとしてアプリのダウンロードを停止させたのである。その結果、株価は一時25%も下落した。

 これでは、もう中国企業に投資することなどできない。リスクが大きすぎる。まして、中国国内への直接投資など論外。投資家は、次々と資金を引き上げるようになった。

中国のインフレが欧米のインフレを加速化 

 現在、投資家に限らず、世界中の企業家、エコノミストが懸念していることが、もう一つある。

 それは、中国国内で進むインフレだ。中国はいまなお「世界の工場」であり、製造・輸出大国である。となると、そこでの物価上昇は、世界中に波及する。欧米で進むインフレを加速させる。

 中国国家統計局が発表する卸売物価指数(工場や農家といった生産者が請求している価格)は、現在、毎月、前年同月比で10%近く上昇を続けている。

 こうした中国国内の物価上昇に、石油や食料などの価格上昇も加わり、欧米では、ここにきてインフレが常態になってきている。

 9月14日に発表されたアメリカの8月の CPI(消費者物価指数)は、食とエネルギーを除いたコア指数で前年同月比4.0%上昇した。FRB(連邦準備制度理事会)はインフレの長期化を否定しているものの、市場はインフレの長期化を織り込んで動き出している。

 EU圏でもインフレは進んでいる。ECB(欧州中央銀行)のデギンドス副総裁は、9月17日、「今年のインフレ率が予想以上に高くなる可能性がある」とメディアにコメントした。

 多くのエコノミストは、コロナ禍による生産縮小やサプライチェーンの混乱が解消すれば、インフレは和らぐと見てきた。しかい、いまのところ、そんな雲行きは見られない。たとえば、航空貨物の需要や海運需要は回復してきているが、その運賃はコロナ禍前の倍に達していたりする。

(つづく)

 

この続きは11月8日(月)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。  ※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

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