連載744  ウクライナ戦争を読み解く(1) 一般メディアはなぜか無視、ウクライナ戦争の黒幕、闇組織の実態(完)

連載744  ウクライナ戦争を読み解く(1)
一般メディアはなぜか無視、ウクライナ戦争の黒幕、闇組織の実態(完)

(この記事の初出は3月15日)

 

軍産複合体にとって紛争、戦争は大歓迎

 このようなPMCと軍需産業が、アメリカの政府(軍および諜報機関)と一体となっているのが、いわゆる「軍産複合体」である。その思想的、政治的なバックボーンとなっているのがネオコンだ。彼らは、常に、紛争と戦争を必要としている。
 これは、アメリカと対立するロシアも、中国も同じだ。覇権国家は常に強力な軍事力を持ち、それを維持するという宿命から逃れられない。アメリカの軍産複合体にとって世界は、常に紛争が続いていなければいけないのだ。
 その点で、ウクライナは優良な顧客だった。アメリカは自らの手を汚さずに、これまでさまざまな軍事支援を行なってきた。
 「ワシントンポスト」の記事(2月27日)によると、オバマ政権時代の2014年から2016年の2年間で、アメリカはウクライナに約6億ドルの軍事支援を行い、その後のトランプ政権は額を減らしたもののこれを続けた。バイデン政権になると支援額はさらに増え、昨年はなんと約10億ドルの軍事支援を行ったという。

戦争は武器・弾薬の在庫一掃セール

 軍事支援というのは、簡単に言えば、武器・弾薬の供与である。その結果、ウクライナ軍はロシア軍に簡単に制圧されると見られていたのに、粘り強く戦っている。
 すでに映像で何度も見たと思うが、今回の戦闘では、アメリカが供与した携帯用地対空ミサイルの「スティンガー」(FIM-92 Stinger)や対戦車ミサイルの「ジャベリン」(FGM-148 Javelin)が大活躍した。
 この二つの武器とも、旧式とはいえ携帯用のため、簡単に操作できるため、ウクライナ軍にはもっとも適していた。とくに「ジャベリン」の命中度は100パーセントだというから、驚きだ。
 このような兵器の大活躍は、軍需産業にとっては大歓迎である。第一に実際の戦争は、武器・弾薬の在庫一掃セールとなり、新しい武器の需要をつくり出す。第二に、武器の性能はカタログだけではわからないから、実戦で効果絶大となれば、格好のマーケティングとなるからだ。
 アメリカの軍需産業は、紛争、戦争が激化するたびに、国防省から予算が降りてくるのでウハウハとなる、今回、ジャベリンを製造したロッキード・マーチンやレイセオンは、笑いが止まらないだろう。
 戦争には、こうしたビジネスの側面が必ずあり、それが悲劇を生み出している。

国連での「生物兵器」をめぐる茶番劇

 3月11日、国連では、ロシアの要請による緊急安全保障理事会が開かれた。ロシアの要請は、「ウクライナでアメリカが生物兵器を開発している」というもので、もちろん、アメリカは完全否定、英国などもアメリカの主張を支持した。
 アメリカのトーマスグリーンフィールド国連大使は「ロシアがこの会合を要請したことが(自作自演の)偽旗作戦の可能性がある」と、ロシアを非難。逆に、ロシアが自身で広めた虚偽情報を口実として、ウクライナで化学兵器や生物兵器を使用する可能性がありえると警告した。
 この安保理の会合に関して、日本の主流メディアは、なんの疑問も提示せず、アメリカ側に立って報道した。あるワイドショーでは、司会者が「本当にロシアというのは平気で嘘をつくんですね」などと述べていたが、ロシアの主張は真っ赤な嘘ではない。私に言わせると、これは茶番劇だ。ロシアもアメリカも嘘をついている。
 なぜなら、この問題のアメリカ側の当事者と言える、国務省ナンバー3のビクトリア・ヌーランド次官(政治担当)が、3月8日、連邦議会で驚くべき証言をしているからだ。
 彼女は、マイク、マルコ・ルビオ上院議員の質問に対し、「ウクライナには生物学研究施設があり、ロシア軍が掌握しようと試みるのではないかと深く懸念している」と語ったのである。
 これにより、ウクライナにはアメリカが資金援助をした生物学研究施設、すなわち生物兵器を開発できる施設があることが確かとなったのだ。
(*今回はここで終わります。この続きと、なぜウクライナ戦争が起こったか? その真相に関して、次回の配信記事で詳述します)


(了)

 

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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 


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