連載1061 インバウンド回復の大誤算。 なぜ中国人は戻って来ないのか? 「学生ローン」「人種優遇」停止で経済失速も? (上)

連載1061 インバウンド回復の大誤算。
なぜ中国人は戻って来ないのか?
「学生ローン」「人種優遇」停止で経済失速も? (上)

(この記事の初出は2023年7月18日)

 いつの間にか日本は「観光立国」になり、インバウンド(訪日観光客)に頼る経済ができ上がった。それがいったんコロナ禍で途絶えたが、コロナ禍明けの今年になって回復。夏の観光シーズンが始まったため、いま、メディアは、日本各地を訪れる外国人の話題で持ちきりだ。
 しかし、その光景は以前とはまったく違っている。かつてあれほどやって来た中国人の姿が見えないのだ。
 いったい、なにが起こっているのだろうか?

 

中国人と思えるのは台湾人、香港人

 コロナ禍前は、新幹線に乗ると必ず中国人観光客に出会った。車内では中国語(北京語)が飛び交って、静岡県に入って富士山が見えると、中国語の歓声が聞こえてきた。
 訪日中国人観光客には、「ゴールデンルート」という定番の観光コースがある。それは、成田で入国し、東京→名古屋→京都→大阪という順に巡り、関空から帰国するという、およそ1週間から2週間の日本の旅だ。
 したがって、このゴールデンルートとその周辺の観光地なら、どこに行っても中国人に出会った。
 ところが、今年の夏は中国人観光客に出会わない。前記したように、新幹線にその姿はほとんどないし、東京の銀座・新宿・浅草にもその姿はほとんどない。私は横浜在住なので、中華街・元町、みなとみらいをよく歩くが、そこでも中国人をほとんど見かけない。
 こう言うと、「そんなはずはない。私はいっぱい見かけた」と言う人がいるが、それは、台湾人か香港人だ。日本人にとっては、大陸からの中国人も台湾人、香港人もみな同じに見えるのだ。
 いったい、中国人はどこへ行ってしまったのか?

コロナ禍以前に比べて、なんと9割減

 日本政府観光局(JNTO)は、毎月、訪日外国人客数を発表している。それによると、2023年1~5月累計の訪日中国人客数は38万6100人。昨年に比べれば増えているが、コロナ禍前に比べたら圧倒的に少ない。これは、コロナ禍前のなんと約9割減である。
 韓国からが258万3400人、台湾からが138万1600人だから、比較にならない少なさだ。
 訪日外国人の国別順位を見ると、韓国がダントツに多く、2位は台湾、3位は香港で、4位以下はアメリカ、タイ、中国、ベトナムとなっている。 韓国は、コロナ禍前の約8割、台湾は7割ほどまで回復しているうえ、コロナ禍前よりも訪日客が増えている国もある。
 それは、ベトナム、シンガポール、ドバイなと中東諸国、アメリカである。
 コロナ禍前の2019年、日本には過去最多の約959万人の中国人がやって来た。その数は、訪日外国人客全体の3割以上を占めていた。また、旅行消費額は1兆7704億円と全体の約37%で、1人当たりの買い物の額は国・地域別で唯一、10万円を超えていた。これは、ほかの国・地域からの観光客の平均の2倍以上だった。
 つまり、日本のインバンドを支えていたのは中国人と、彼らの「爆買い」だったのである。それが、コロナ規制が撤廃され、行き来がほぼ自由になったというのに、戻ってこないのだ。


(つづく)

この続きは8月16日(水)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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