連載1087 覇権国アメリカの「内憂外患」 万引き、不法移民、高齢大統領、ウクライナの「4重苦」(上)

連載1087 覇権国アメリカの「内憂外患」 万引き、不法移民、高齢大統領、ウクライナの「4重苦」(上)

(この記事の初出は2023年9月12日)

 ウクライナ戦争の長期化とともに、世界の混迷は深まっている。本来なら、覇権国家アメリカが強力なリーダーシップを発揮して、世界を安定化させ、人類は共通のテーマである地球温暖化阻止に結束しなければならない。
 しかし、当のアメリカ自身が分断され、国内は混迷している。いまのアメリカはまさに「内憂外患」状態にあると言っていい。
 万引きが方向し、不法移民は街に溢れ、大統領は高齢で言動がおぼつかない。そこにウクライナ戦争で戦費がかさむ一方になっている。
 今回は、アメリカの現状を見ながら、今後どうなっていくのかを考える。

 

G20でアメリカは世界をリードできたのか?

 先日、インドで行われたG20の閉幕後、多くの日本のメディアは「ロシアと中国の首脳が欠席するなか、目立ったのはアメリカの戦略的な首脳外交だった」と、まったくノーテンキな報道で締めくくった。G20後、バイデン大統領がベトナムを訪問すると、今度は「中国包囲網が強まった」と、さらにノーテンキな報道を繰り返した。
 いまのアメリカは、「世界覇権国」(global hegemonic power)として世界をリードしていく力を失いつつある。中ロはアメリカと西側に包囲されてもしぶとく粘り、グローバルサウスを引きずり込んで、なんとか持ちこたえている。この後、中国経済が低迷していけば別の展開になるかもしれないが、現状では、グローバルサウス は「コウモリ」だ。中ロ側にもアメリカと西側にも“いい顔”をし、自国利益ばかり追求している。
 とくにインドはひどい。ロシアの石油と武器を買ってロシアに恩を売りながら、日米豪との「Quad」(クアッド)と「自由で開かれたアジア太平洋」に参加して利益を得ようとしている。中国の次の「世界の工場」を狙っているのは見え見えで、完全なコウモリ外交をやっている。

アメリカの譲歩でロシア名指しは立ち消えに

 その結果が、G20の共同宣言が、日本などが知らないうちに、初日の討議の途中にインド政府から発表されるという異例の事態となって現れた。
 『突然の首脳宣言合意 日本政府関係者「聞いてない」「ふざけるな」』と、毎日新聞は伝えたが、もちろんアメリカは事前に知っていたはずである。
 今回のG20共同宣言は、開催前から採択できるかどうかが危ぶまれていた。前回のインドネシアでのG20では、ロシアを名指しで非難したが、今回は反対が多かったからだ。インドも名指し反対派だった。
 そのため、共同宣言は「すべての国は領土の獲得のための威嚇や武力の行使を控えなければならない」という、名指しを避けた曖昧な文言となった。開催国インドの顔を立てたと言えばそれまでだが、アメリカと英国などが譲歩したのは明白だ。
 このように、アメリカの世界覇権国としてのリーダーシップは衰えている。はっきり言って、バイデンは「お人好し」と言うほかない。
 共同宣言の中身を知って、ウクライナ外務省のニコレンコ報道官は、SNSに次のような投稿をした。
「強い文言を盛り込もうとしたパートナーに感謝している。しかしロシアによるウクライナ侵攻について、G20はなにも誇れるものはない」

(つづく)

この続きは10月2日(月)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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