国際基督教大学高等学校

 

2023秋 教育特集 帰国子女受入校

帰国生入試を行うなど、海外からの帰国生を応援する帰国子女受入校。各校の特徴や帰国子女受け入れの意義、海外経験をもつ生徒の強みなどについて伺いました。

 

国際基督教大学高等学校

 

 

―貴校のミッション、ビジョンなどの基本理念を教えてください。

本校では、「世界平和への貢献をできる市民を育てること」、「人権について高い意識を持っている若者を育てること」、そして、「それらを支えるキリスト教という根幹をしっかりと理解すること」という3つを主なミッションとしています。ビジョンは、大学の創立理念の通り、第二次世界大戦の惨禍を二度と繰り返さない、そういうことに貢献できる市民を世界に送り出したいということです。

―毎年、年間50カ国にものぼる世界各国から帰国生を受け入れられていますが、そこまで一貫して国際的多様性を重視されている理由を教えていただけますか?

学校のありようは、意図的な国際的多様性重視の結果ではなく、毎年入学してくださる皆さんの経歴が反映されてのものです。入試にあたって、地域別や現地校とインターナショナルスクールとの割合などを事前に決めてはいません。我々が来てほしいと思ったみなさんが、最終的に入学され、結果的に非常に多様な空間ができているのだと考えています。

―帰国生の評価として、語学力などの定量的学力だけでなく、定性的な経験、特に“苦い経験“も重視されていますが、それはなぜですか?またその “苦い経験“とは、どのような経験でしょうか?

帰国生は、日本から海外に渡航し、現地で非常に苦い思いをすることがあります。海外に行った瞬間に、通う学校で英語を全く喋れない中で授業に参加しなくてはいけない孤独感。中学生にもかかわらず、ESLのクラスに入って小学生が読んでいるような本を読むことになる焦りなど。そして、急に帰国が決まり味わう辛い思いもあります。また一から自分自身が学ぶ環境を作り直さなければならないときに感じる孤独感は、思春期にはアイデンティティをゆさぶります。

ICU高校は、そのような思い全てをひっくるめて、そのままあなたですよ、どうぞ隠すことなくトランクに入れてあなた自身として帰ってきてください、と伝えたいです。すべての経験・記憶があなたにとって将来必ず為になる、そのように信じています。ICU高校は、このような経験をした生徒たちが多くいるので、互いの人権を尊重するという不文律があります。それは、これまで世界中・日本のどこかで辛い思い、寂しい思い、孤独感を経験し、帰ってきたときにそれをまた繰り返さず、仲間として一緒に過ごしたい、という強い思いが、学校を包んでいると思います。

ーそれほどまでに、国際的多様性を重視されるなか、卒業生にはどのようなキャリア、人生を過ごしてほしいとお考えですか?

私たちは本校を卒業して、その後は“成功者”として歩んでほしいと願っているわけではありません。むしろ、自分たちが思い描いた理想・未来の世界にむかって挑戦してほしい。そのための逞しさを高校時代に身につけて欲しいと思っています。思い描いた未来に向かってどういうステップを踏まないといけないのか、どういう忍耐が必要なのか、どういうブレイクスルーが必要なのか、ということをしっかり考えてほしいと願います。最終的には、ローカルでも、グローバルでも、何か地域のために役立つような人生を送ってくれたらすごく嬉しいです。また、そういう卒業生と世界中の様々な場所で会えるのが私たちの誇りです。

ー日本においては、“グローバル人材”の必要性が言われてひさしいように思いますが、今後同じ議論を繰り返さないようにするためには、日本の教育は今後どのように進化するべきだとお考えですか?

本校では“人材”という言葉を、使うことは避けるという暗黙の合意があります。人は消費財のようなものではないと我々は考えています。個としてそれぞれが非常に重要な存在だと思っています。

将来の日本の教育に関してですが、私自身は、現在の教育課程は、多くの要素が、時代とともにパッチワーク的に付け足されてしまい、結果的に、時間数は限られているのに、教える内容が増え過ぎてしまい、焦点がぼけてしまっているのではないかと思っています。そこで、おかしな話かもしれませんが、「人格の完成」を目標に今一度捉えなおすという原点回帰が、実は重要なのではと思っています。生きるための“技術”を習得する場の教育現場ではなく、より哲学的な問いを考える場として活性化されたら良いな、と思っています

日本での受験を考えておられるこちらの保護者の皆さんに、一言アドバイスをお願いします

保護者の皆さん、お子さんには、今その場所でしか経験できないことにどうかリーチアウトし、つかんで、その経験をトランクに詰め込んで帰ってこさせてあげてください。ICU高校に、みんながそれぞれの経験を持ち寄って、分かち合うことで、次の自分の方向性が見つかるのだと思っています。だから、家の中に閉じこもらずに、世界を広げてきてください。もしかすると、あなたはその土地にいる最初で最後の日本人かもしれないぐらいの気持ちで過ごしてもらえたら、たとえ味気ないものでも、貴重な時間に変わるのではないでしょうか。

【学校の基本情報】

  • 教育目標
    国際基督教大学高等学校(ICU)は1978年4月に開校しました。「帰国生教育に正面から取組むこと」、「帰国生と国内生それぞれの長所を生かすこと」、「多様な生徒が共に学び理解を深める教育環境を築くこと」を目標としています。創立以来、100ヶ国以上の国々から約6500人の帰国生を受け入れてきました。

  • 生徒数と帰国性の比率
    3学年合わせた生徒数は約720名、そのうち帰国生徒は480名で3分の2を占めています。

  • 教員の特徴や採用時に重視している点
    アカデミックな分野においては第一人者であることが最大に重要であることと同時に、ICU高校の目指している教育理念・方向性を受け止めてもらい、我々教員集団が共同体としてお互いを支え合うことができることを重視しています。受験教育ができるから採用することは絶対にないのです。多様な生徒と共に学ぶ多様な教員集団でありたいと願っています。

【カリキュラム、進学先について】

  • 選択授業の例や豊富さについて
    特徴的な授業内容は、主要3教科はレベル別・少人数で生徒の教育背景に合わせて授業を行っています。理科は実験がたくさんできるようにクラスを分割して授業をしています。また、社会も1年時には、日本語の運用能力に応じてレベルを分けています。

    選択授業は、第2学年時には全授業時間の3分の1程度を、第3学年時は、3分の2程度を自分で設計して選びます。受験に直結する科目もありますが、それ以外に課題探求を行う選択科目も豊富です。小さな学校ですし、HRで行う授業が少ないので、学年全体で仲良くなっていきます。

  • 課外授業の例
    過去には文部科学省による「スーパーグローバルハイスクール(SGH)」事業の指定校として、国際的体験学習の機会を充実させましたが、現在は、本校独自のGlobal Learning Programsを充実させています。
    取り組み例 https://icu-h.ed.jp/sgh/

  • 他クラス、他学年、他校や卒業生との交流について
    生徒会のみなさんは他校との交流もしています。卒業生との交流は非常に多く学校の様々なイベントで手伝いをしてくれています。

  • 進学先のサポートとして行なっている取り組み
    ICU高校では進学指導とは呼ばず、進路指導をしています。あくまでも将来をどんな風に創り出していくかという進路のサポートをしていると考えてください。
    偏差値を見てあなたはこの大学行ったら良いよとか、そういう雑なことはやっていない、どちらかというと生き方の探究を共にしたいというふうに我々は考えています。


国際基督教大学高等学校

〒184-8503 東京都小金井市東町1-1-1
Tel 0422-33-3401
https://icu-h.ed.jp/

2023秋 教育特集 帰国子女受入校

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