まだまだ上がる株価 景気がよくないのに株価だけが上がる理由とは?(上)

(この記事の初出は2024年2月13日)


 今年もまた「官製春闘」で、政府は給料を上げると盛んに喧伝している。しかし、この経済状況ではどうやっても無理だろう。景気はよくない。経済指標は軒並みよくない。

 しかし、株価だけは高騰し、バブル期の高値更新は間違いない状況になっている。そう、メディアも専門家も投資家もみんな言い出した。
 ただし誰もが、なぜ株価が上がっているのか、本当の理由を説明しない。いや、メディアや専門家ほど説明できない。
 今回も、先週に続いて、そのあまりにも単純な理由を述べる。私は投資家ではないので、率直に言えるが、今後も当分、株価が上がるのは間違いない。しかし、その先になにがあるかは自明だ。

経済指標をチェックしても意味がない

 面倒なので結論から書くが、景気がいい、経済がいいから株価が上がるわけではない。株価と実体経済とは、現在の金融資本主義においては連動しない。
 そのため、経済成長率、景気動向指数、失業率、消費者物価などという「経済指数」をいくらチェックしても、ほとんど意味がない。
 また、PER(株価収益率:株価と利益を比べて株価が割安か割高かを判断するための指標)、PBR(株価純資産倍率: 1株当たり純資産と株価を比べるための指標)。ROE(自己資本利益率:企業が自己資本に対してどれだけの利益を生み出したのかを表す指標)などを、こまめに調べるのも、それほど意味がない。個別銘柄は別として、平均株価はそんなことでは動かない。
 前回も述べたが、株価が上がるのは「、「買いたい人間が売りたい人間より多いから」の一言に尽きる。よって、金融の世界を見渡せば、買いたい人間のほうが多く、カネあまりが続いているので、今後も上がるのだ。

「期待値」が高いから最高値更新は間違いない

 では、買いたい人間が多いということはどういうことだろうか? それは、「もっと上がる」と思っている人間が多いということである。つまり、「期待が膨らんでいる=期待値が高い」ということで、「期待値」こそが、株価が上がる最大の要因と言える。
 なぜなら、現在の日本の景気、経済状況で、日本株を買えるわけがないからだ。しかし、キャリア十分な投資家なら、そんなことはわかったうえで株を買っているはずだ。
 私は、これまで、金融バブルの崩壊を警告する記事を多く書いてきたが、その記事が崩壊の局面にピタリと当たった試しはない。いつ金融バブルが崩壊するか? そんなことは予測できない。だから、みんなが買っているときは上がるのだ。
 現在、中国が失速し、ウクライナ戦争で欧州も景気がよくない。そんなかで、円安なら日本株にひとまず投資して転がそうという投資筋が多い。
 よって、日経平均はまだ上がる。バブル期の最高値3万8915円の更新は目前。じきに4万円台に乗せるだろう。

日経平均を上げているのはほぼ4銘柄だけ

 株価の上昇で、一部メディアは日本経済が好調、景気がよくなったという報道をしている。これは、株価が実体経済を反映するという、すでに化石化した古い見方が染み付いているからだ。経済学を学んだ真面目な経済記者ほど、この思考から抜け出せない。
 しかし、現実を見れば、日本株の上昇は、NY株が上がっていることに引っ張られていることも大きい。NY市場(ダウとナスダック)では、いわゆるGAFAMやそのほかのいわゆるハイテク大手と、肥満薬で評判のイーライリリーなど製薬大手が株価上昇を牽引している。
 日本も変わらない。日本で好調なのは、一部の大企業だけである。日本市場では全体の3割ほどの銘柄だけが上がっているにすぎない。それも大企業に集中している。
 日経平均の場合、その指数を構成する225銘柄のうち、実際には上位の22銘柄で半分のウエイトを占めている。そのなかでもユニクロとソフトバンク、ファナック、東京エレクトロンの4銘柄が上がり続けていて、これが株価全体を牽引している。
 つまり、日本の株価には、実体経済の景気を左右する大多数の中小企業が含まれていない。

(つづく)

 

この続きは3月8日(金)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。