闘病記ばかり1100冊、小さな図書室

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共同通信
闘病記を集めた図書室「闘病記の森」。奥は星湖舎の金井一弘社長=2024年2月、大阪市

 大阪市中央区に、がんやうつなどの病と向き合う日々をつづった本約1100冊を集めた小さな図書室「闘病記の森」がオープンした。「誰かの闘病記がきっと支えてくれる。頼れる場所があると伝えたい」。運営する出版社「星湖舎」の社長金井一弘さん(67)は、不安を抱えた患者や家族に寄り添い、ぴったりの一冊を見つける手助けをしている。(共同通信=野澤拓矢)

 星湖舎は病気や障害のある人の自費出版本を専門に扱っている。図書室は2023年12月にオープン。市内中心部の雑居ビル9階、広さ約30平方メートルの一室だ。自社だけでなく、金井さんが編集の参考にするため集めた他社の本も並ぶ。

 闘病記にこだわるのには理由がある。1999年に会社を設立してから数年後、心筋症を患う女性が同社を訪ねた。女性は他の人の闘病記に勇気づけられたといい、今度は自分の経験を本にしたいと訴えた。

 金井さんは「命のバトンが本でつながっている。たとえ売れなくても出版に携わる意義はこれだと感じた」と振り返る。

 金井さん自身、妻の闘病を支えた際、患者家族会に参加して助かった経験がある。「孤独にさいなまれ、情報も少ない患者や家族に役立ててほしい」。静かな場所でじっくり読めるようにと、会社の事務所にあった本を移し、図書室を開いた。

 2024年2月1日午後、脳腫瘍を抱える40代女性が、夫を伴い大阪府吹田市から闘病記の森を訪れた。金井さんは女性の病状などを丁寧に聞きながら数冊の本を薦めた。女性は「同じ境遇の人の思いを知りたかった。『しんどい』と話せる場所があって良かった」とほっとした様子で話した。

 利用は1日2人程度。それでも全国から「この病気の本はあるか」と問い合わせがある。金井さんは「症例の少ない難病は本を用意できないこともある。悲しい思いをさせないよう幅広く本をそろえたい」と意気込む。

 利用は無料。開館は原則平日午前11時~午後4時で電話予約が必要。星湖舎、電話06(6777)3410。

 ▽闘病記 重い病を患った人や家族が、体験や人生観をつづった本。著名人だけでなく、一般の人が書いた闘病記も数多く出版されている。2005年6月、市民団体から闘病記の寄贈を受けた東京都立中央図書館(港区)が専門のコーナーを開設。全国の図書館で同様の動きが広がった。インターネットでは闘病ブログを検索できるサイトもある。

図書室「闘病記の森」を運営する星湖舎の金井一弘社長