2025年5月1日 NEWS DAILY CONTENTS COMMUNITY インタビュー

アカデミア探訪 2 エグゼクティブインタビュー 慶応義塾大学WPI Bio2Q特任教授 小山尚彦(こやま  たかひこ)

AIによる産業革命をいかに乗り切るか、一緒に考えていきましょう。


慶応義塾大学WPI Bio2Q特任教授。1999年コーネル大学で物理学博士号を取得。武田薬品工業、IBMワトソン研究所を経て現職。専門はAIとQuantum Computingのライフサイエンスへの応用。武田薬品工業ではがんや中枢薬の研究、リード最適化などを行った。2014年にIBMワトソン研究所でWatson for Genomicsのリーダーとなる。20年に発表した新型コロナウイルスの論文が中国科学院より先に発表され話題となる。大阪府出身。

私にとって、ニューヨークは大阪の次に長く住んだ“第二の故郷”です。とりわけこの時期は、寒い冬を乗り越え気温も上がってきて爽やかな気分になります。今住んでいる東京とは違って、車での移動がリラックスできるのもいいですね。今回はピッツバーグに行くためにラガーディア空港を改修以来初めて使いました。ターミナルがすっかりきれいになっていて、ライドシェアも使いやすかったです。

カーネギーメロン大学とAIとライフサイエンスにおける共同研究について話し合うためです。それと、私は永住権を保持しているので半年に一度、アメリカに戻って来ないといけないのです。ニューヨークに家族を置いて東京に単身赴任をしていますので、家族との時間を過ごすためでもあります。今回は、Regenoron社が主宰するWESEF(Westchester Science & Engineering Fair)の審判も務めさせていただきました。

2022年のChatGPT3の登場以来、大規模言語モデル(LLM)は大きく進歩を遂げています。プログラミングではコーディングをほぼ自動でやってくれますし、各社がReasoningエンジンを備え始めているので、これまで以上に自然かつ納得のいく答えを出すことができます。さらに、AIエージェントにより、さらに詳細な情報を取り込み、かつ外部プログラムを動かすことも可能になっています。今後は「Physical AI」と呼ばれる多くの機能を備えた次世代のロボットが登場して、実世界とつながっていきます。

ニューヨークはコーネル大学に留学してから数えて30年の付き合いです。今後、研究はAIや量子コンピューティングのライフサイエンス領域での応用を進めていきます。現在、2030のエラー訂正された量子コンピュータをターゲットにアルゴリズムを開発しています。また、上述のとおり今後はカーネギーメロン大学とはAIとライフサイエンスの分野で共同研究を行う予定ですので、ニューヨークには頻繁に戻って来ることになると思います。その他、脳科学の分野での研究も考えています。

ライドシェアに乗って、グランド・セントラル・パークウェイの渋滞に巻き込まれると「ニューヨークに帰ってきた!」と実感します。滞在中はNYSC(ジム)に行ったり、スーパーやデリでお気に入りのコールドカットをスライスしてもらったりするのが日課です。戻って来るたびに家の中の何かが壊れているので(笑)、ホームデポにも必ず寄ります。

現代社会はAIによって大きく変わりつつあります。特にPhysical AIによる変化はめざましく、言語や映像だけではなく実世界とのインターアクションも始まっています。この産業革命をいかに乗り切るか、みなさんと一緒に考えていきたいと思っています。ちなみにAIや最新コンピューティングについての連載を、DAILYSUN New Yorkで始めることになりましたので、引き続き読んでいただけますと、うれしいです。

時間のあるときはジョージ・ワシントン・ブリッジも自転車で渡ります。
onとoffの切り替えは得意な方だと思います(笑)
Bio2Qのポスドクメンバーと(写真手前・左)
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