2025年5月8日 COMMUNITY インタビュー

企業探訪 3 エグゼクティブインタビュー シミックホールディングス株式会社 中村和男(なかむら かずお)

シミックホールディングス株式会社代表取締役CEO。1969年京都大学薬学部を卒業、2008年金沢大学大学院自然科学研究科博士後期課程修了。薬学博士。1969年三共株式会社(現第一三共株式会社)に入社し、世界的に有名なブロックバスター薬、メバロチン(高脂血症、家族性高コレステロール血症治療薬)の開発プロジェクトリーダーを担当した後に独立。92年、日本初のCRO(医薬品開発支援)であるシミックを創業。製薬企業のバリューチェーンを総合的に支援するビジネスモデルを確立。現在は、これまでのビジネスモデルを発展させ、一人一人の健康価値向上に貢献する企業を目指している。山梨県甲府市出身。https://www.cmicgroup.com

日本独自の価値観「IKIGAI」を、
ヘルスケアに生かしたい。

ラジオ番組「α- IKIGAI Bar」収録中の中村さん。「京都人の心意気が感じられるひとときは、
私にとって活力の源であり、同時に癒しでもあります」

シミックグループがラジオ番組「α- IKIGAI Bar」を始めたきっかけは?
日本が誇る「IKIGAI」という価値観を広め、より充実した人生を送るためのサポートをしたいという思いがありました。2025年3月20日に国連が定める「国際幸福デー」で、今年の「世界幸福度ランキング」が発表され、日本は55位でした。日本は長寿国でありながら、幸福度ランキングでは毎年低い位置にあります。だからと言って、日本は本当に不幸といえるのでしょうか。私は、これらのランキングで基準とされている表面的な幸福を追うのではなく、自分の存在意義を見つけ、情熱を持って日々を過ごすことが、真の豊かな生活につながると考えています。日本には、それを考えるうえでの様々なヒントがあると思っており、それは世界にも広められると思っています。

病気の予防や治療だけでなく、一人一人が自分らしく生きるための支援が求められる時代です。私たちシミックグループは、個人を中心に据えたヘルスケアの価値創造に取り組んでおり、心や体だけでなく、人生そのものを支える仕組みづくりを目指しています。世界中で注目される「IKIGAI」の概念を軸に、個々人の「IKIGAI」に基づき心身ともに充実した生活を送るための支援(私たちは、これを「Personal health value(個々人の健康価値)の最大化」と呼んでいます。)をしながら、共に成長し、新しい未来を築いていくことがシミックグループの使命だと考えています。

この番組を通じて、日本のリスナーにどのようなことを伝えたいですか?
僕がいつも感じているのは、この日本が江戸時代、そして「ジャパンミラクル」と呼ばれる時代を経て経済成長率10%を超えた輝かしい歴史を持つ一方で、ここ30年間、長期停滞に陥り、人口減少や経済の低迷、教育問題など多くの課題に直面しているという現状に対するもやもや感です。

そんな中で、僕は答えを京都に見出せるのではないかと思ったのです。海外に行くたびに、多くの非日本人が京都に興味を持ち尊敬の目で見ていることに気付かされます。それはなぜか?京都は、長い歴史の中でビジネスやアート、伝統工芸、文化を守り続けてきた人々が暮らす場所だからです。“京都人”と呼ばれる彼らは短期的な利益のみを追うのではなく、100年先を見据えた長期的な考え方を持っています。その姿勢には、今の日本が必要としているヒントがたくさん詰まっていると思います。「α- IKIGAI Bar」では、京都の誇る世界的な魅力・価値をさまざまなゲストとともにお酒を飲みながら楽しく語り合う“場”を作っており、番組を通じて、リスナーの皆さんとともに、“京都人・京都文化”の本質に迫れればと考えています。

この番組をぜひお聴きいただき、みなさんが新たな気付きや広い視野を得るきっかけとなればと願っています。リスナーが自分の「IKIGAI」を見つけることで、生きる力を感じ、心豊かな人生のヒントを提供できればと思っています。そして、一緒に未来を一緒に考えるきっかけになれば幸いです。

「IKIGAI」は文化的価値観による影響も大きいと思います。グローバルに活動するシミックグループとしては、それら文化的価値観の違いをどのようにとらえていますか?日本ならではの価値観である「IKIGAI」をどのように世界に発信していきたいですか?
「IKIGAI」は日本独自の価値観であり、私たちはその価値をグローバルな視点で活用する可能性に注目しています。「IKIGAI」の捉え方や表現方法は文化によって異なりますが、その違いを理解し尊重することで、世界中の人々がそれぞれ自分自身の「IKIGAI」を見つける手助けができると信じています。

ヘルスケア分野では、心身の健康に加え精神的な充実感やその人にとって意義があると思える生き方が重要です。IKIGAIを感じることで、心の充実が肉体的な健康にも良い影響を与え、健やかな生活の支えになると考えています。この考え方を基に、私たちは「IKIGAI」をウェルビーイングの一環として捉え、ヘルスケア分野で新たなアプローチを提供していきます。

ニューヨークの日本人コミュニティーへメッセージをお願いします。
京都が持つ奥深さや、長い歴史の中で培われた日本独特の歴史、習慣、考え方の魅力、強さを、改めて再認識していただけるとうれしいです。それが日本文化の持つ力だと思っています。ただ、その一方で、そういった価値観や文化が、アメリカにはまだ十分に伝わっていないように感じます。ですので、ぜひともそうした日本の文化をアメリカの中で広めていただき、その文化がうまくビジネスとして成り立つような仕組み、エコシステムを一緒に作り上げていければと思っています。みなさんの協力があれば、それが実現できると確信しています。日本を出て感じるその魅力や強さを、もっと多くの人々に届け、次の世代につなげていけるような活動ができれば、素晴らしい未来が待っていると思います。 

番組のスタッフと。左端はホストを務める井上雅博さん。本業は表具師
収録中の様子。和気あいあいとした中にも緊張感が漂う

「α- IKIGAI Bar」とは?
CMICグループの提供で2023年4月、FM京都でスタートしたラジオ番組。毎週火曜の午後10時から関西エリアで放送中。番組のマスターは、昼間は京都で表具師として活動する井上雅博さん。彼が営む“Bar”には、アーティストやクリエイター、伝統文化に携わる人々、さらにはヘルスケアを追求する人たちなど、さまざまなゲストが訪れます。番組では、京都の文化やアート、そして健康をテーマにそれぞれの「IKIGAI」を深掘り。ときには知られざる裏話も飛び出し、新たな発見やインスピレーションが得られると好評です。“京都のとあるBar”のカウンターで語られるような滋味深いトークには、あなたの毎日を豊かにしてくれるヒントが満載です。

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