2025年7月28日 NY de Volunteer COLUMN

『NYで見つけた、私にできること〜NY de Volunteer』(2)折り紙ワークショップで見つけた多文化交流

ちょっとした「やってみよう」が、人と人をつなげ、地域を支えているニューヨーク。ボランティア活動でのリアルな声や、心動く瞬間をNY de Volunteerがお届けします。

私たちNY de Volunteerは、社会課題の解決に向けて自ら考え行動する「チェンジメーカー」を育てることを目的に、2003年からニューヨークで活動している非営利団体です。

NY de Volunteerは、コニーアイランドを訪れた1人の日本人女性が、あまりに汚いビーチにショックを受け、「何かできることを」と、自らの手でごみ拾いを始めたことから始まりました。連載では、活動現場での人と人との触れ合いから生まれる、さまざまなエピソードをお届けしていきます。

連載第2回はマンハッタンのミッドタウン・イーストにあるニューヨーク市レクリエーションセンター(NYC Recreation Center/以下レクリエーションセンター)で実施した折り紙ワークショップについてレポートいたします。

多様な人種・民族が暮らし「人種のサラダボウル」とも呼ばれるニューヨーク。しかし、その多様性がそのまま相互理解や共生へと直結するわけではありません。英語が第一言語でない移民、経済的に厳しい状況にある家庭、文化的な背景の違いによる孤立感…。多文化都市だからこそ、人と人の間に見えない壁が生まれやすいといった問題もあります。

地域コミュニティーの入口、レクリエーションセンター
レクリエーションセンターは、市都市公園局(NYC Parks)が運営する公共施設。スポーツやアート、ワークショップなどを通じて、年齢や国籍、言語の壁を越えて人々が出会い、つながる機会を無料または低価格で提供しています。

NY de Volunteerは、このレクリエーションセンターと10年以上にわたり交流を続け、定期的に日本文化を紹介するイベントやボランティア活動を行ってきました。

日本人だからこそできる、文化を通したつながりの創出
今回のワークショップも「日本人として、私たちに何ができるか?」との問いを出発点に企画。答えの一つが、折り紙という日本文化を通じて、異文化同士の心の距離を近づけることでした。

言葉がうまく話せなくても、折り紙は手を動かしながら自然と笑顔と会話が生まれるシンプルで温かなコミュニケーションツールです。特に移民や非ネイティブの人たちが多く利用するレクリエーションセンターでは、言語の壁を越える手段として最適でした。

はじめの一歩に寄り添えるように
当日は、子どもからシニアまで約20人のニューヨーカーが参加。スタッフ2人と、4人のボランティアが会場で運営を担いました。ボランティアの中には初参加の人も多く、「興味はあったけど勇気が出ず…今回思いきって参加しました」「地域の方と交流したくて応募しました」といった声が寄せられました。

当日参加したボランティアがクイズを読みたいと立候補 
折り紙について参加者に説明するボランティアたち。少し緊張気味…

ワークショップ開始前には、ボランティア同士の自己紹介やセンターの意義について共有し、初心者でも安心して活動できるよう配慮しました。

教えるではなく、一緒に作る
活動中は、犬や桜といった比較的簡単な折り紙から始め、後半には「もっと難しいものに挑戦したい」とのリクエストを受けて、手裏剣などにも挑戦しました。

事前に運営チームが用意した翻訳付きの折り方ガイドを囲みながら、「ああでもない」「こうかも?」とみんなで悩みながら折る時間。そこには、「教える、教えられる」ではなく、「共に体験し、共に楽しむ」空気が自然と広がっていました。

桜を折りながら手紙を書く参加者、それを見て盛り上がる周囲の人たち─そんな温かな場面がいくつも生まれました。

小さな自信が、新たな一歩を後押しする
片づけが終わるころには、不安そうだったボランティアの表情もほぐれ、「もっと深く関わってみたい」

「次回は準備から参加したい」といった前向きな言葉が聞かれました。また、「ボランティアの姿勢や工夫から学ぶことが多く、自分の課題にも気づけた」「人との関わりが、自分自身にも良い影響を与えてくれた」などの振り返りも。

折った桜にメッセージを添える参加者。これにはみんなが感動。Beatuiful!の声が聞こえてきました

「私にもできるかも」が広がる場所
気がつくと、あっという間に片づけの時間に。
活動前は不安そうだったボランティアも、実際に子どもたちや参加者と触れ合う中で徐々に緊張がほぐれ、最後には「これからも前向きに参加したい」と笑顔で話してくれました。「ボランティアに参加することで、他の人たちの関わり方や工夫から多くを学び、自分自身の課題にも気づくことができた。とても貴重な体験となった」といった感想や、「次回は事前のお手伝いから関わってみたい」と、うれしい声もいただきました。

また、もともと社会貢献活動に関心があり、現在学びを深めている日本から来米中の学生も参加してくれました。今回の経験が、そうした一人ひとりの想いや歩みに寄り添い、新たな一歩を踏み出すきっかけや後押しとなれれば幸いです。

ゲストとボランティアで知恵を出し合って難しい作品にチャレンジ
最初のうちは緊張していたボランティアも、終了するころにはゲストとすっかり打ち解けて笑顔に
参加してくれたボランティアのみなさん

日常の中にあるたった一枚の紙が、国や言葉の違いを超えて、人と人をつなぎ、笑顔を生み出す。そんな瞬間がいくつも重なった今回のワークショップ。異文化交流とは特別なことではないと実感させられたひとときでした。

NY de Volunteerが目指しているのは、「誰もが小さな一歩を踏み出せる場所」をつくること。特別なスキルがなくても、英語が完璧でなくても、「私にもできるかも」という感覚を持てるボランティアの場です。

多文化が交錯するこの街で、「日本人だからこそできること」を考え、実行し、地域社会に寄り添う挑戦を、これからも続けていきます。

NY de Volunteer

市民の社会参加やボランティア活動を推進し、グローバルリーダーの育成を通じて、社会課題の解決に向けて自発的に考え、行動する「チェンジメーカー」を社会に送り出すことを目的に、2003年から活動する非営利法人。公式SNSでは、ニューヨークでのボランティア活動の魅力や、イベント情報を配信中。フォロー&いいね!をお待ちしています。

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