米CBSテレビは、深夜トーク番組「ザ・レイト・ショー・ウィズ・スティーヴン・コルベア」を2026年5月に終了する。コルベア氏をクビにするだけでなく、30年以上続いた長寿番組も打ち切りにする。コルベア氏はトランプ米大統領をコミカルに批判してきたが、CBSが政権との軋轢を避けた、と視聴者は非難。米メディアも同じ論調だ。しかし、テレビがNetflixやTikTokに負けたというのが現実ではないか。誰が夜中ちかくに政治風刺番組を見るのか。

CBSが真にトランプ政権に配慮したのであれば、番組をすぐに打ち切り、コルベア氏には契約が切れる来年5月まで報酬を払えばいい。しかし、コルベア氏は今後10カ月間、夜な夜な政権の揚げ足を取ることができる。
実際に、CBSの親会社パラマウントグローバルが、トランプ氏が起こした損害賠償請求訴訟で1600万ドルの和解金の支払いで合意した際、雇用主でさえコルベア氏は容赦ない。「(トランプ氏への)どでかい賄賂だ!」
CBSは「決定は深夜番組を取り巻く厳しい状況下での純粋な財務的判断」で、「番組のパフォーマンス、内容、その他の事案とは全く関係ない」と述べている。しかし、番組スタッフは約200人、年間製作費は1億ドルだが、4000万ドルの赤字を年々計上してきた(ニューヨークタイムズ)。深夜番組にいかにスポンサー(CM)が付かないかといった現実を示している。赤字を出しながらも人員を削らずに、1つの番組が200人も雇用しているのもテレビ局の“タイタニック”体質がうかがえる。
視聴者数は、コルベア氏が司会となった2015年に最高829万人だったが、今年第2四半期は平均241万人だった。
私の周りの若い人とは過去10年以上、深夜番組について話した記憶はない。もっぱら、NetflixなどストリーミングのドラマやYouTubeなどで見たコンテンツで、ニュースはスマホに速報が来た途端にテキストなどで話題にする。
現代人は、“トランプ劇場”であふれるニュースやSNSで疲れ切っている。夜になって観るのは、ストリーミングのドラマかお気に入りのYouTube、TikTokビデオだ。23時半になって、テレビの前に座り、コルベア氏の番組を見る人々は日々の生活に余裕がある人たちだろう。しかもハイライトは翌日SNSで見られる。
「このふざけたギャングたち(注:番組スタッフ)と一緒にあと10カ月続けるのを楽しみにしているよ。いいかい?」とコルベア氏。番組打ち切り発表直後の放送でこうコメントした。
取材・文/津山恵子
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