2025年8月14日 NEWS DAILY CONTENTS

IQで未来の子どもを選ぶ? アメリカで急成長する「天才児ビジネス」の光と影

米シリコンバレーで、エグゼクティブ男女を対象に天才児の親になれる「遺伝子最適化」産業が興隆している。その裏には知能指数(IQ)信仰がある。しかし危険をはらむと警告する声もある。ウォール・ストリート・ジャーナルが12日、伝えた。

「遺伝子適正化」産業は、ナチスドイツや日本の優生保護法など優生思想を想像させるとして嫌悪感を示す人もいる。写真はイメージ(photo: Unsplash / Shubham Sharan)

シリコンバレーは、トップレベルのプレスクール(保育園と同等の教育施設)にIQテストがある土地柄。「頭が良くないと成功しない」との強迫観念がある。それが少しでも知的能力の高い子どもを持ちたいと「遺伝的最適化」サービスに駆り立てているのだ。

テック業界のエグゼクティブが結婚相談所へ押しかける。アイビーリーグ卒業の伴侶を求めているという。サービス料は50万ドル。人工授精でベストな結果が出るよう遺伝子診断でIQを予測するサービスも利用者が多い。その代金は6000〜5万ドル。IQ予想をしながら体外受精(IVF)を試みるソフトウエアのエンジニア夫婦は「このあたりでは至極当たり前のこと」と話す。

ヒトの胎芽のIQテストなどを5万ドルで請け負う、バークレー・ジェノミックス・プロジェクトの共同設立者で数学者のタビ・ボストン=ティルセンさんはAIが人類を破滅させるのを阻止する研究に数年間を費やした。しかし、現時点ではそれが不可能と判明。だから、「AIから人類を救うことのできるスーパーヒューマン作りに一役買いたい」という。

ただ、「高IQ目的で、愛のない結婚」を生む恐れがある。また、遺伝子最適化の努力が実を結ぶかはいまだに不明だ。せいぜいIQが3〜4ポイント上がる程度との分析もある。さらに、両親の選択を手助けするとはいうものの、危険な優生学的行為と背中合わせだ。「果たして公平だろうか」とスタンフォード大学の法律とバイオサイエンスセンターのハンク・グリーリー所長は指摘する。「金持ちが遺伝子を操作して、われわれを支配するというのは、SF(サイエンスフィクション)の世界だけにしてもらいたい」と顔をしかめた。

                       
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