2025年9月16日 NEWS DAILY CONTENTS

NY市民のイスラエルへの反感高まる、市長選の世論調査から見えてきたこと

イスラエル軍が15日、パレスチナ自治区ガザの中心都市ガザに地上侵攻を開始した。地上戦による新たな人道危機が拡大するのは必至だ。国連人権理事会の独立調査委員会は16日、イスラエルはガザで「ジェノサイド(大量虐殺)」を行なったと認定する報告書を発表。国際社会がイスラエルに対する非難をかつてないほど強めている中、ニューヨーク市民の世論も変化してきている。

イスラエルのネタニヤフ首相の米議会訪問に反対する親パレスチナ派の市民(2024年5月、ワシントン Photo: Keiko Tsuyama)

ニューヨークはアメリカでユダヤ系の人口が最も多い都市だが、ニューヨークタイムズとシエナ大学が先ごろ実施した有権者を対象にした世論調査によれば、ガザでの長期にわたる紛争において、イスラエルよりもパレスチナ側に同情する市民が増えていることが明らかになった。ニューヨークタイムズが10日、伝えた。

イスラエル離れが市長選に波及

登録有権者の44%がパレスチナ側に、26%がイスラエル側に共感を示していた。また有権者の51%が「イスラエル批判は本質的に反ユダヤ主義ではない」と回答し、31%が反対意見を示した。イスラエルの戦争遂行方法とガザへの支援制限が市民からの反発を招いており、伝統的にイスラエルの強力な支持者であった人々を含む多くの人々が見解を変えている。

こうした変化は11月に行われるニューヨーク市長選にも波及。支持率で他候補を大きく引き離しているゾーラン・マムダニ州議会議員(民主)はパレスチナ人の苦境に強く共鳴し、ガザにおけるイスラエルの行動を「ジェノサイド」と厳しく糾弾。マムダニ氏の信念は、伝統的にニューヨークの有権者にとって不適格と見なされるものであり、対立候補のエリック・アダムズ現市長とアンドリュー・クオモ前知事の立場とは全く対照的だ。

アダムズ氏とクオモ氏は、マムダニ氏のイスラエルに対する姿勢を執拗に批判し、マムダニ氏を「反ユダヤ主義者で、テロリストの支持者」と非難している。しかし、世論調査の結果を見ると、アダムズ氏とクオモ氏は有権者の考えを見誤っていることになる。

有権者の半数、イスラエル批判と反ユダヤ主義を同一視せず

有権者がイスラエル・パレスチナ紛争への対応が最も適切だと考える候補者としては、マムダニ氏が39%の支持を得て首位。クオモ氏は17%、アダムズ氏を支持したのはわずか10%だった。

マムダニ氏の予備選挙での勝利と、選挙戦における継続的な強さは、若い有権者からの強力な支持によって支えられている。この年齢層はマムダニ氏がこの紛争に最も適切に対処していると答える傾向が特に強かった。マムダニ氏を支持するアミナ・モハメッドさん(19)は、「文字通り人々を殺している国家を私は認めません」と話す。「人々がウェブサイトに投稿している、爆撃で犠牲となった子どもたちの写真などは作り出すことは不可能です。そんなものは作り出せないのです」

世論調査によれば、マムダニ氏の支持者はパレスチナの立場に共感する傾向が他候補と比べてはるかに高かった。クオモ氏の支持者は、38%が「イスラエルにやや共感する」、28%が「パレスチナ人に共感する」、18%が「両グループを等しく支持する」と答えていた。クオモ氏の支持者でさえ、同氏が紛争に最も適切に対処したと答えたのは約半数に留まり、12%はマムダニ氏の方が優れていると回答した。

クオモ氏はマムダニ氏の見解を非難し続けているが、前知事の支持者層はイスラエル批判を反ユダヤ主義と見なす傾向が特に強いわけではない。支持者の約43%が「そのような批判は反ユダヤ主義ではない」と回答しており、これはニューヨーク市民全体の割合と大きく変わらない。登録有権者の約半数は「イスラエルを批判すること自体が本質的に反ユダヤ主義ではない」と考えている。

世論調査は2025年9月2〜6日、ニューヨーク市の登録有権者1284人を対象に電話によるインタビューとテキストメッセージで実施された。

                       
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