成人の注意欠陥・多動性障害(ADHD)が増えている。なぜより多くの成人がADHDと診断されるようになったのか、それが患者にとって何を意味するのかについて、イェール大学の医学ジャーナル、イェールメディシンが論じている。

大人のADHDと診断を受けることで、多くの患者は『謎が解けた』と安堵を感じるという。写真はイメージ(photo: Unsplash / Hiki App)
ADHDは従来、特に男子に多く見られる小児期の疾患と考えられ、教室での問題行動と関連付けられることが多かった。しかし近年、成人、特に女性や有色人種においてADHDと診断されるケースが増加している。小児期に始まったADHDの症状が成人期まで持続することは以前から知られていたものの、成人期に診断を受けることは最近までまれだった。
医療分析企業トゥルベータ(Truveta)のデータによれば、30歳以上のADHD診断件数は2021年以降増加傾向にある。21年1月から24年10月にかけて、30~44歳の成人では約61%、45~64歳の成人では64%の増加率を示した。
小児・青年・成人を診療するイェール大学医学部精神科医のユエン・ユーニス博士は、特に子育て世代の中高年成人において顕著だと指摘する。増加の理由はいくつかの仮説があるが、オンとオフが曖昧になった高ストレスのライフスタイルや、SNSや医療専門家以外の情報源を用いて自己診断する傾向の増加もその一つだという。
成人期のADHDと小児期のADHDとの違い
ADHDは神経発達障害であり、脳の成長と発達に関わる問題だ。小児期には、注意力の欠如、衝動性の制御困難、多動といった症状で現れることが多くある。
一方、成人では症状の現れ方が異なる場合がある。多くの人にとってADHDは常に存在していたものの、診断されなかった状態で、キャリアや人間関係、子育てなど生活が複雑化するにつれ、症状がより顕著になることがある。多動性は落ち着きのなさとして現れることもあれば、全く見られないこともある。CDCによると、ADHDの成人は、注意力の管理、興味のない長時間のタスクの遂行、整理整頓の維持、行動の制御、落ち着きのなさといった点で困難を抱える可能性がある。
成人におけるADHDの診断方法
小児と同様に、成人におけるADHDの診断には通常、詳細な臨床評価が行われる。これには症状評価のためのチェックリストや、行動・発達歴の検討が含まれる。不安、うつ、睡眠障害、アルコール・薬物使用、学習障害など、ADHDと類似した症状を引き起こす可能性があり、しばしば併発する健康状態を特定するため、医学的・心理学的検査が行われることもある。
「ADHDの疑いがある人は、精神保健の専門家による徹底的な評価を受けるべきです。インターネットはADHDに関する情報やピアサポートを容易に入手できる手段ですが、正確な診断は信頼できる臨床専門家によるものでなければなりません」とユエン博士。評価には、生物学的・心理的・社会的・文化的要因を含む全人的な考察に加え、生い立ちに遡る神経発達評価が含まれる。
成人ADHDの治療法
成人ADHDの治療は多角的アプローチが一般的で、必要に応じて心理療法と薬物療法を組み合わせる。心理療法は初期治療として行われることが多く、認知行動療法(CBT)が含まれる場合がある。CBTでは、否定的または非建設的な思考や行動パターンを特定し、変容させることを学ぶ。成人ADHD患者にとって、CBTは計画立案・整理整頓・時間管理・感情調節といった実行機能の課題に対処する助けとなる。CBTに加え、マインドフルネス認知療法(MBCT)は集中力向上や衝動制御に効果的。弁証法的行動療法(DBT)は感情調節障害や対人関係の問題に悩む人々を支援する。
薬物療法の併用も
「ADHDが日常生活に深刻な影響を及ぼしている場合にのみ薬を処方します」とユエン医師。この場合、アデラルやコンサータなどの刺激薬が第一選択薬となる。ただし不安障害、双極性障害、物質使用障害などの併存疾患がある場合は、非刺激薬を処方するか、まず併存疾患の治療を優先する。刺激剤は、集中力や意欲を高める脳内物質であるドーパミンのレベルを増加させることで作用するが、これらの薬剤は規制薬物であるため、慎重な管理が必要となる。
診断による安堵と自己肯定
ユエン医師が治療する多くの成人は、ADHDの診断により自己肯定感をもつという。「患者はよく『ああ、なるほど!これまでずっとつまずきながら苦労してきたのには理由があったのだ』と言います。適切な治療を受ければ、彼らは安堵感を得られるのです」
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