2025年10月16日 NEWS DAILY CONTENTS

ジョン・レノンも住んでいたNYの超高級アパート、実は有名な心霊スポットだった!【NY心霊スポット2】

観光都市・ニューヨークには、実は“心霊好き”の間で密かな人気を集めるスポットが点在する。古い豪邸、荘厳な教会、夜の街角・・・そこに眠る物語を辿れば、街のもう一つの歴史が見えてくる。ハロウィンシーズンを前に、ニューヨーク在住のSF&ファンタジー評論家・小谷真理さんが語る「ゴーストハンティングの世界」とは。

今回は、ジョン・レノンも住んでいた伝説的超高級アパートメント「ダコタハウス」を紹介する(前回のエピソード)。

ダコタハウス

ニューヨークのアイコン的なアパートでありながら、内実は栄光と悲劇、芸術と死、憧れと恐怖が入り混じった物語で満ちている。ダコタハウスは、ニューヨークの歴史と人々の想像力が生み出した「幽霊屋敷」なのかもしれない。

◆ ダコタハウス
ジョン・レノンも住んでいた超高級アパートメント

ダコタハウス(1 W. 72nd St.)は、ジョン・レノンが1980年12月8日、入口で待ち伏せをしていたマーク・チャップマンに銃撃されて死亡した事件によって、世界的に有名に。西72丁目からセントラルパークに入った場所には、レノンを偲ぶ「ストロベリーフィールズ」が設けられ、「イマジン」のプレートが置かれている。今も世界中からファンが訪れる聖地であり、その茂みの向こうにダコタハウスが見える。

ダコタハウスはゴシックスタイルの壮麗なアパートメントで、1884年のオープン直後の入居者には、スタインウェイピアノの創業者一族をはじめ、女優のローレン・バコール、歌手のジュディ・ガーランド、作曲家・指揮者のレナード・バーンスタイン、俳優のボリス・カーロフ、バレエダンサーのルドルフ・ヌレエフなど、著名な芸術家や富裕層が住んでいたことで知られている。コープ(共同所有アパート)であるため入居審査が非常に厳しく、マドンナなどの著名人でも入居できなかった。

セントラルパーク内のストロベリーフィールズ

エピソード1

ダコタハウスには数々の怪談が言い伝えられている。建設者のエドワード・C・クラークは、世界的に普及した家庭用ミシンメーカー「シンガー社」の副社長であり、顧問弁護士でもあった。豪奢で管理の行き届いた住まいを実現するため、常識を覆す建築計画を立てたが、完成の2年前に死去した。そのため、ダコタには当初からクラークの霊が現れると噂されていた。

中でも有名なのが、エレベーターの壁紙が何者かに切り裂かれる怪事件だ。モダンなデザインに改修された直後から、壁紙がズタズタにされる騒ぎが繰り返し起こり、住人たちは騒然となった。管理人が秘密裏にチームを結成して監視を強めたところ怪現象は収まったが、犯人は特定されなかった。住人たちは「これはクラークの霊がモダンな改装に怒ったのだ」と憶測、「ダコタの幽霊」の仕業と語り継がれている。

エピソード2

1968年、ジョン・レノンの死に先立つこと十数年前、ダコタハウスの外観はロマン・ポランスキー監督のホラー映画「ローズマリーの赤ちゃん」に登場した。撮影された建物の窓には、当時の住人で著名な舞台照明デザイナー、ジョー・マイエルジナーが机に向かって仕事をしている姿が偶然映り込んでいた。舞台「セールスマンの死」や「欲望という名の電車」で知られる巨匠の姿が、映画の不気味なシーンの中にちらりと現れるのは、まるで「幽霊のような出演」と語り継がれている。

エピソード3

ダコタハウスには他にも著名人の幽霊譚が数多く伝わっている。「オズの魔法使」のドロシー役で知られる大スター、ジュディ・ガーランドの姿を見たという証言や、20世紀最高のバレエダンサーと称されたルドルフ・ヌレエフもまた晩年をニューヨークで過ごし、死後はダコタで幽霊となって目撃されたと噂される人物である。

中でも有名なのが、ハリウッドのホラー映画俳優ボリス・カーロフだ。ハロウィンの季節に、映画「フランケンシュタイン」で演じた怪物の格好で、キャンディの袋を肩にかつぎ、ダコタの地下室に立っていたと語られるが、実際にキャンディを受け取った子どもはいない。

エピソード4

レノンの死後、妻のオノ・ヨーコが、ピアノのそばに立っているレノンの幽霊から「怖がらないで。ずっときみのそばにいるよ」と告げられた、と語った。

エピソード5

10歳ほどの少年と少女の幽霊も目撃されている。2人とも19世紀末から20世紀初頭の服装をしているという。とりわけ少女の姿は詳しく報告されており、長い金髪に黄色の服、白い靴下に銀のバックルがついた黒い革靴を身に着けていて、転がるボールを追って廊下を横切り、「今日はあたしの誕生日なの」と告げると消えるのだという。

この少女は1881年から84年までダコタに暮らしていた子どもではないかと推定されている。そして1980年、ジョン・レノンがダコタの前で射殺された後には、この少女が「死を告げる幽霊」なのではないかとの噂も広まった。

写真・案内人/小谷真理

■ 次回は、アンディ・ウォーホルなど著名人の定宿だった「チェルシーホテル」にまつわる伝説を紹介

前回までの記事【NY心霊スポット1】NYで密かに人気、どっぷり歴史に触れられる“ゴーストハンティング”あの豪邸や教会も実は…

案内人はNY在住のSF&ファンタジー評論家・小谷真理さん

本好きが高じてSFとファンタジーにのめり込み、評論家として活動。女性SFをフェミニズム批評で読み解いた『女性状無意識』で日本SF大賞を受賞し、学術書から児童向けの読書ガイドまで幅広く執筆している。長年、日本経済新聞夕刊で新刊書評を担当し、日本のポップカルチャーをフェミニズム批評で読み解く第一人者でもある。

若い頃からアメリカのSF大会に参加するため来米し、現地の書店で怪談や幽霊屋敷のガイド本に出会ったことをきっかけに心霊スポットに興味をもつようになった。現在はニューヨークに滞在し、観光の合間に心霊スポットを訪れながら、アメリカの歴史や文化を知る手がかりとして心霊スポットを訪れることを楽しみにしている。

X:https://x.com/KotaniMari
公式サイト:http://inherzone.org

                       
合わせて読みたい記事
RELATED POST