2025年10月30日 NEWS DAILY CONTENTS

AI時代に雇用が増える? アメリカの大手IT企業が示す「共に働く」未来

アメリカの大手IT企業IBMがAI(人工知能)導入で8000人を解雇したのが2023年。ところが最近、積極的に採用を増やし、従業員数は増加している。AIが雇用にどんな影響を与えるのか?持続可能な農産物を提供する団体、ボストンオーガニックス(Boston Organics)がその実態を伝えた。

企業は、AIを単なる雇用削減技術と捉えるのではなく、生産性向上と高度なスキルを要する雇用機会の創出に活用できる。IBMが人員削減から拡大へと至った経緯は、適切に管理された自動化が如何に事業成長を促進し得るかを示している。写真はイメージ(photo: Unsplash / Igor Omilaev)

IBMが解雇したのはAIに置き換えられる部門の人材。例えば、人事部門では対話型AIエージェントを導入した。休暇申請や人事関連書類の処理など、ルーティン作業の94%はオートメーション化に成功。24年にはこのシステムが1150万件のタスクを処理し、顧客満足度の指数も過去7年でマイナス35からプラス74に好転した。IBM全体では、70を超える部門で効率が上がり、35億ドルの経済効果があったという。

この結果、面白い現象が生じた。ソフトウエアエンジニア、セールスやマーケティングのスペシャリストなど、創造性と批判的思考が必要になる人材への需要が増えたのだ。IBMの人事部門でも、6%のタスクはAIでは処理できない。複雑な問題解決、顧客関係管理、イノベーションには人間が必要なのだ。そこは戦略的に重要な部分で、豊富なナレッジと高度なスキルが要求される。

つまり、AIは ①予想可能なルーティン作業で失職者を出す ②テクニカルで戦略的な部門で雇用を創造する ③専門知識と高度なスキルを持つ人材の賃金上乗せ幅(スキルプレミアム)が増大する ④AIと人間がコラボするハイブリッドな労働環境を誕生させる。これはIBMだけでなくAIを導入する全ての企業に当てはまる。

企業はルーティン作業の部門を選び出し、AIに置き換える。世界経済フォーラムによると、2030年までにAIのオートメーションにより9200万人が失職する。と同時に企業はどこに人間が必要なのか、どんな知識とスキルを持った人材が不足しているかを割り出して、積極的にリクルートを開始する。

われわれはAIと共存する労働環境で生き残り、成功する術を身に付けなければならない。まず、AIも含めた専門知識を深めること。そして、人間にしかできない創造性、戦略的思考や対人能力といったスキルを磨くことが肝要になる。

                       
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